セックスにトラウマのある女の子・中編

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約束の時間。
彼女の姿は見えない。
メールも・・・来てない。

(・・・あ)

そういえば僕、返事をしていない。
いつ頃行くかくらいはメールしておくべきだったよな。
それに気付いたら、なんか自分がおかしくなって、少し落ち着けた。
それに、この運動場は無駄にだだっ広い。
もう鶴田さんはとっくに来てて、別のところで待ってるかもしれない。
なんで気がつかなかったのか。
あ、いい天気だな、今日。

『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は管理棟の前の駐輪場にいます』

送信・・・っと、ちょっと待てよ。
管理棟じゃ、わかりにくいかもだな。

『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は正門近くの管理棟の、目の前の駐輪場にいます。緑の背の低い建物です』

よし、送・・・、あ、これじゃダメだよ、だって「お前がこっちに来い」みたいになってるもん。

『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕はもう着いてます。どこにいるか教えてくれる?』

うん?
これじゃ、僕のことを待たせちゃったって気を遣わせてしまうかな。
もうちょっと直すか。

『返事してなくてごめんなさい。さっきメールに気がついた。もう来てるかな?僕は今到着しました。どこにいるか教えてくれる?』

よし、これでいいかな。
送信。

「こんにちは」

(わぁ!)

振り向くと、そこには鶴田さんがいた。
すっごい笑顔だった。
余程のことがない限り、女の子が屈託なく笑う様子は魅力的なものだ。
それを鶴田さんが、それも結構近い間合いで。
これだけで来た価値あった。
ふられるかもしんないけど、良かった。
そして、やっぱり笑ったら可愛かった。

「おっぱいだけじゃないんだぜ」と生熊たちに教えてやりたい・・・ような知られたくないような。

少し贅沢を言うなら、私服姿が見たかったかな。
鶴田さん、日曜だというのに制服だったから。

「あ、メール・・・」

間抜けなタイミングで送られたメールを見た鶴田さんは、「優しいんだね」と言って、きびすをくるりと返した。
ほっぺたがまた桜色に染まったのを僕は見逃さなかった。
僕は女の子に告白したことも初めてで、もちろんその返事をいただくのも今回が初めてだ。
が、僕はこの時点で、桜色の未来が来るのを電撃的に確信した。
僕は、(生熊と杉田に後でなんか奢ってやろ)と頭の隅っこの方でわずかに考えながら、すたすたと姿勢良く歩き出した鶴田さんの後をふらふらとついて行った。

あまりの展開に驚いたが、僕が連れて行かれたのは彼女の部屋だった。

「上がって」

事もなげに鶴田さんは僕に促したけど、日曜だからご家族も在宅だった。

「お邪魔します」

ぎこちなさすぎる挨拶をリビングにいるお父さんらしき人に言っているのも構わず、鶴田さんはさっさと階段を上がっていってしまう。
お父さんは高校生の娘が男を連れて来たのにも関わらず、にっこり笑って「いらっしゃい」。

(どういう家庭環境だろうか?)と不思議に思った。

後でわかったことには、このお父さんは実はおじいちゃんだった。
しかも、どっかで見たことあると思ったら町の助役さんだった。
どうりで結構いい家だった。
部屋に入るときなぜかまた「お邪魔します」と口走って鶴田さんに笑われたが、それ以外は典型的なやり取りがあって・・・。

「どうぞ、そこ座ってて」

「うん」

「何か飲み物持って来るね」

「あ、おかまいなく」

僕は部屋に1人残された。
別に監視カメラが付いているわけではない、と思う。
でもなんだかきょろきょろしづらい。
ほんとは存分にきょろきょろ、いや、じろじろしたいのに、首を回すのを躊躇ってしまう。
顔をひねらなくても見える範囲には、窓とベッドがあった。
ベッドに眼が行ってしまったことはわざわざことさら白状するまでもない。
ピンクのチェックのシーツとカバーにはきっちり糊がきいていてシワひとつない。
やっぱり鶴田さんはきれい好きなんだ。

シャワーは浴びたけど、結局チャリンコでまた汗をかいちゃった。
くんくん。
いや、あまり近づかなければいいんだけど、万が一ということも・・・。

ん?
ベッドの枕元に何かある。
あれ、あれぇ?
あれって、あれだよな。

「あ、ばれちゃった。かな?」

わぁ!
タイミングが唐突だ。
心臓に悪い人だ。

「ばれちゃった?て、何が?」

僕はベッドから慌てて顔を背けて、自分の膝小僧を見つめた。
正座していたから、ちょうど説教されて俯く子供のような格好で。
ところが頭の中は桃色一色、アダルト満開だった。
枕元のあれは、アレだ。
間違いない、ゴムだ。

今年の正月に、従兄から3つ貰った。

「2つは財布の中に入れとけ」って。
「あと1つは付ける練習に使え」って。

実際、僕は勢い余って2回練習した。
そして虎の子の残弾ひとつは、こないだ実戦に投入した。
見間違えじゃないだろう。
リング状で数珠繋ぎになっているものが、この世に三つも四つもあるわけない。

「ばれちゃった、かな?」って・・・何をだ?

「窓から見えるんだよ」

「あ・・・」

鶴田さんが見ていたのは、ベッドではなく窓のほうだった。
総合運動場のすぐ脇にある高台の上にある彼女の家からは、正門の辺りがはっきり展望できた。
試合の空き時間なんだろう、さっきとは違うユニフォームの子たちが、やっぱり縁石に座ってアイスを食べてる。
膝についた泥汚れまで見えた。

「実はここから見てたんだ」

「そうだったんだ」

「ごめんね、あたしの都合で」

「いやいや」

全然気にしないで下さいと、僕は横に首を振った。
ぶるんぶるん振った。

そりゃあまあ、ちょっと遠かったですけどもね。
それにしても、どうして鶴田さんはこんなに余裕があるんだろう。
彼女は窓の桟に肘をついて、こう、お尻を突き出したような格好になってる。
あまりに無防備すぎるんじゃないか。

普通、こんなに気を遣わないものなのかな?
それとも僕は信頼されてる?
もしくは無害だと舐められてる?
ていうか、学校の外で会ったことない奴をいきなり部屋に入れるか?
ひょっとしたら、制服の折り目も真っ直ぐな鶴田さん、というのは学校限定の被り物で、本当はすごくふしだらな子だったんだろうか?

ともあれ、スカートからすらりと伸びた真っ白な脚を丁寧に折り畳み、鶴田さんは僕の向かいに腰かけた。
そして、ついに話題が核心に入っていったようだった。

「今日はごめんね。急に呼び出したりなんかして」

「いや、別にいいよ。暇だったし」

「でも、かなり慌てて来てくれたでしょ?」

「え?なんでわかったの」

鶴田さんは黒目だけを動かし、窓をチラッと見た。

ああ、そうか。
僕が必死で自転車漕いで駆け込んでくる姿も見られてたってことか。

それにしても鶴田さんの眼はすごい力がある。
なんかレーザーポインタみたいだった。
普通の人なら指を差したり顎をしゃくったりするところなのに、彼女は瞳をちらりと動かすだけ。
それで意図が通じてしまう、わかってしまう。

「いやあ、実はちょっと疲れてて、起きるのが遅かったから」

「ごめんね。それに遠かったでしょう」

「いやいや、全然。んなこたぁない」

「優しいんだね」

「鶴田さんの呼び出しならどこでも行くさ。見合うだけの対価があるからね」

「対価?」

「さっき、笑顔を見せてくれたでしょ。学校では見たことがなかったからさ」

「それなら服もちょっと考えておくべきだったかな?」

「あはは、制服だったから、ちょっと残念だったかも」

ちょっとだけ勇気を絞ってみた臭いセリフは華麗にスルーされた。
慣れないことはするもんじゃない、というかしてはいけない。
けれどもそれ以外のところは、おおむね会話は自然に進んだ・・・ように思えたのは、そこまでだった。

「じゃあ小林君、少し休も?」

「へ?」

「だって疲れてるでしょ?それに寝不足みたいだし」

そう言う鶴田さんのまなこはちらりと動き、ベッドの方を指した。

「え?どういう・・・?何?」

「あたしもちょっとね、寝不足なんだ。色々話す前にちょっと寝とこうよ」

僕はズボンを太ももの皮膚ごと引っ掴んで、飛びそうになった理性を必死で繋ぎ止めた。

「寝る」という動詞には、日向の意味と日陰の意味がある。
僕は知ってる。
鶴田さんは知ってるんだろうか、わかってるんだろうか?
僕がうんともすんとも言う前に鶴田さんは立ち上り、乱れてもいないベッドの乱れをしつこいくらいに正した。
で、布団に入りやすいように掛け布団を端を三角に折り返した。
いくら町の助役さんの家で、ちょっとしたお金持ちだろうと、年頃の娘にダブルを買い与える与太親はいないだろう。
セミダブルでもなかった。
どう見てもシングルサイズだった。
間断ない動きで、鶴田さんは支度を調えていく。
彼女は大きなクローゼットを開けて少し考える素振りを見せたあと、黄色の袖なしニットと下に黒のセミフレアを選び出して、おもむろにブレザーを脱いだ。
一旦思考停止していた僕だが、さすがに鶴田さんがブラウスのボタンに手をかけたところで跳ね起きて、制した。
思わず肩を抱くような格好になってしまって、ついに僕は勃起してしまった。
修学旅行明け、しかも疲れてたから昨日はヌいていない。
通算6日分が溜まってる。

「いや・・・あのさ」

二の句が接げない!

「ん?恥ずかしい?ごめん、じゃあ外で着替えてこようか」

いや、違うそうじゃない!
ていうか、逆だろ?
僕が出てくべきところだろ。
恥ずかしがるのは君だろ!

と、ツッコみたいのに出てくる言葉は「あうあうあう」だけ。
首を横に振ったり縦に振ったりするので精一杯。

「なんだ。やっぱりこのままのがいいんじゃない」

両肩を僕の胸板の隙間にぴったりと収めた鶴田さんは、急にいたずらっぽく笑った。
顔が近い。
よく見ると、目の下にクマがあるのをメイクか何かで隠していたようだ。

そういえばさっき自分でも言ってたけど、なんで鶴田さん、寝不足なんだろ?
それに、なんで僕の家が運動場から遠いって知ってたんだろう?

そんな疑問が脳漿の中をゆるゆると漂っている最中、僕の体は自由を失って、うつ伏せにベッドの上に倒れこんだ。
顔から枕に突っ込んでしまい、何も見えない。
背中にかすかな重みを感じる。
枕カバーからは鶴田さんの髪の匂いがする。
女の子って、こんなに軽いんだ。
少し湿った温かいものが僕の首筋にぴとっと貼り付き、少しの間、強く吸い続けた。
これは、たぶん唇だ。
唇はやがて離れ、今度は僕の耳元に近づき、囁いた。

「あたしのこと、好き?」

僕は枕に顔を擦りつけるようにして頷いた。

「本当だよね?冗談じゃ、ないよね?」

前にも聞かれた質問だ。
こくり、こくり。
僕はもう2回、追加で頷いた。
すると鶴田さんは僕の頭を鷲掴みにして、横を向かせた。
こめかみに爪が少しめり込むくらいの、すごい力だった。
ようやく横目の視界の隅で、彼女の顔がぼんやり捉えられた。

「あたしだけ?篠原先輩は?あの人、小林君の何なの?」

変な体勢だから息がつけない。

「スイミングの友達」とだけ、ようやく搾り出すように発音したら、彼女は上半身にかかる僕の拘束を解いてくれた。

スイミングの友達。
ちょっと良心は咎めたけど、嘘はついてない。
実は僕の童貞卒業はすでに姉御肌の篠原先輩にお情けで済ませてもらっていた。
でも付き合ってるわけじゃない。
あれは出会いがしらの事故みたいなものだったから、数に入れなくてセーフだと思う。
そう思うことにした。

<続く>

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