精子の匂いフェチな先輩・前編

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高校に入学した後、しばらくしてから1つ上の女性の先輩に気に入られてしまった。
別に同じクラブや部活に所属していたとか、同好会で知り合ったわけではない。
出身中学が同じだったとか、何かの縁でもともと知り合いだったわけでもない。
たまたま廊下をすれ違った時、ちょっと好みのタイプだったのでじーっと見つめていたら目が合ってしまい、当時社会性もまだ低かった俺はそれでもじーっと見つめていただけのことだ。
相手も『???』という顔をした後、近寄ってきて、「何かな?1年生君?」と先輩風を吹かせながら話しかけてきたのが出会いのきっかけだったように思う。

その後、校内のどこかで発見されるたびに、「あっ、1年生君発見!」と大きな声で呼ばれたり、いきなり背後から襲いかかってきてギュッと首を絞められたりという、周りから見れば親密な関係に思われるような行動によって何度か俺も慌ててしまうことがあった。
もともとタイプ的にはちょっと好みだったということもあり、俺としてもなんだかくすぐったいような満更でもない気分ではあったのだが、さすがにちょっぴり無遠慮な先輩の態度にウザいと思ってしまうことがあったのも事実だ。
いきなり背後から襲われた時は、「ちょっとぉ~、先輩やめてもらえますか?」とつっけんどんな態度をとってしまったこともある。
それでも先輩はめげないタイプだった。
俺たちはちょっぴりいがみ合うような、それでいて仲がいいような、ライバルのようで姉弟のような関係になっていた。
お互いに弱みは見せられないなというような突っ張った関係だ。

そんな楽しい関係がはじまって数ヶ月目、俺は痛恨のミスをした。
テスト直前の時期や、暗記などの詰め込み作業が必要な時、俺は頑なに自分に課していることがあった。
それはいわゆる『オナ禁』だ。
当時俺たちの間では、オナニーをすると記憶力や集中力が下がり、学力が低下するという噂がそれとなく広がっていた。
簡単に言ってしまうと、「やり過ぎるとバカになる」という話だったと思う。
その話をなんとなく信じていた俺は、テストの2週間ほど前からオナ禁をはじめて、テスト期間が終了するまで我慢をしていたのだ。
しかし、テスト最終日になると溢れんばかりに溜まりまくったものが、ちょっとしたきっかけでちょびちょび漏れてしまうこともたびたびあった。
なにしろ若いのだ、1週間~2週間も溜め込むのは本当に辛い。
そうした前例にも負けずに重要な試験の最終日を迎え、そして事件が発生した。

俺は前夜、睡眠をギリギリまで削った挙句、倒れるように寝込んだ末に、あろうことか夢精をしてしまい、遅刻寸前のギリギリの時間に目が覚めるという失態をしでかしてしまったのだ。
大量放出した下着は乾き切らずに生臭い匂いを放っていたので、すぐさま脱ぎ捨て新しい下着に穿き替えた。
しかしシャワーする時間などまったく残っていない。
寝巻から制服にそのまま着替えて食事を満足に取ることもできず、すぐさま走って家を出る始末だ。
そして汗をかきながらようやく下駄箱で上履きに履き替え、自分の教室を目指していた時に、正面から先輩がすました顔で近づいてきた。
俺の顔を見て『おっ!』という嬉しそうな表情になった後、口を開こうとして『???』という表情になり、少し鼻をスンスンとすすってから、「あっ」と小さく声を漏らした。

俺はその時、先輩が何を感じ取ったのかさっぱり気が付いていなかったのだが、どうやらきちんとシャワーをしなかったため、特有な生臭い匂いが体にこびりついていたのかもしれない。
自分の匂いは案外自分では気が付かないものだ。
先輩はちょっぴり固まった後、少しよそよそしい態度というか、ちょっぴり気まずいような雰囲気で視線を彷徨わせてから、こう言ってきた。

「や、やぁ~、おはよ。今日は大切な試験の最終日でしょ?頑張ってたようだから労ってあげるよ。放課後、奢ってあげるから、ちょっと付き合いな?」

なぜかドキドキしたような不思議な雰囲気で、そうこう言ってる間にもちょっぴり赤面しはじめていた。
俺は、「はぁ?・・・。まぁ今日は付き合ってもいいですよ」などと、何も知らずに、そして恥ずかしげもなく堂々と答えていた。

試験がはじまる前に友人たち数人と集まってテスト範囲の予想などで盛り上がっていたのだが、親友の1人が少し顔をしかめて他の連中に聞こえないよう俺にそっと耳打ちをしてきた。

「お前、ひょっとして今朝オナニーした?ちょっと匂ってるぜ」

その言葉に金槌で頭を思い切り殴られたような衝撃を受け、その後、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
周りの連中も当然気が付いていることだろう。
あまりの恥ずかしさにどうすればいいのか悩んだが、結局、「じつは今朝、夢精してしまって・・・」と正直に打ち明けた。
男友達どもは笑ったり冷やかしたりすることもなく、「うん、うん、仕方がないよな。俺もこの時期はたまにやらかすよ」などと慰めてくれて、それ以上の恥をかかずにその場はなんとかやり過ごすことができたのだ。

しかし問題は先輩だ。
きっと先輩もこの匂いに気が付いたに違いない。
だからあんなよそよそしい態度をとったのだろう。
はっきり言って合わせる顔がないほど恥ずかしくなっていた。
しかし、どうすることもできない。
トイレで洗いたくても十分に拭きとれるようなタオルは持ち合わせていなかったし、それよりもまずは試験をなんとか乗り切らなければならない。
前日までの友人たちを交えた自己採点で、どうも結果が振るわなかったので、今日は得意教科で挽回しなければならなかったのだ。

やむを得ず、何もなかったかのように頭から締め出して試験を受け、どうにか放課後を迎えることができた。
無駄とはわかっていても、なるべくクラスメイトと関わらないように距離感に気を付けながらなんとか教室を抜け出し、下駄箱に向かってさっさと帰宅することに決めた。
先輩との約束なんてこの際、ブッチだ。
男には男の事情というものもある。
女性である先輩にこんな恥ずかしい匂いを嗅がれて、その後も楽しく付き合える自信など俺にはなかった。
それなのに・・・。
俺の下駄箱の前の柱に寄りかかって、両手で鞄を持ちながら俺を待つ先輩の姿を見つけた時は、(え~っ、なんで俺よりも前にここにいるんだよ?)という信じられない気持ちでショックを受けた。

「やぁ!1年生君(←本当にこう呼ばれていた)、試験はどうだった?」

「せ、先輩・・・。あの・・・。申し訳ないんですけど、今日のところは・・・」

「はははぁ~~~、やっぱりそう言うと思ったよ。まぁ、あたしが奢ってあげるなんてこれまで一度もなかったもんね。でも遠慮することはないぞよ」

妙な言葉遣いで明るく楽しい雰囲気で俺の断りをやんわりと退ける。
しかし俺は先輩の誘いに乗るわけにはいかなかった。
本当に恥ずかしかったのだ。

「いや、そういうわけではないんですけど・・・。やっぱ今日のところは・・・」

「もぅ~、せっかくあたしが奢ってあげるって言ったのに、どうしてそんなに遠慮してるのかな?」

「せ、先輩・・・。先輩もわかってるでしょ?今朝、気が付いたんじゃ?」

「えっ、なんのこと?」

(うわっ、この女、俺のことをからかってるのか?)

ムカッと来る部分もあったのだが、それ以上に恥ずかしさが先立って、俺は少しでも早く先輩との会話を打ち切って帰宅したかった。
俺は無言で上履きを脱ぐと、土足に履き替えて、先輩に無言で頭を下げてからさっさと帰宅しようとした。
そうしている間も恥ずかしさが込み上げてきて、(頼むから匂いを嗅がないで~)という思いが駆け巡っていた。

「ちょ、ちょっと待って!どうしたのよ?」

そう言って俺の腕を掴もうとする先輩。
だけど俺もこれ以上の恥をかかされたくはない。

「先輩!先輩は俺のこと、からかってるんでしょ?」

俺は自分でもびっくりするほどビシッ!っと大きな声で先輩を怒鳴っていた。

「ち、違う・・・。そんなんじゃない・・・」

先輩はビクッとしてから、今まで見せたこともないような、しおらしくか弱い雰囲気で俺の言葉を否定した。
俺は自分の荒げた声にびっくりすると同時に、先輩のすがるような視線に驚いて固まってしまった。

「ごめん・・・。ちょっと、もう少し人が来ない所に移動しよ?」

その言葉を聞いても俺は先輩の誘いに乗る気にはならなかった。
くるりと振り向いてスタスタと足早にその場を立ち去ろうとする。

「坂下君!(仮名)お願い、ちょっと待って!話を聞いて・・・」

必死さの滲むその声にちょっぴり罪悪感を感じて、俺は「はい」と俯きながら答えていた。
俺の高校は体育館と武道館という2つの大きな建物があり、試験期間は当然部活もお休みだ。
それは試験最終日であっても同じことで、直列に並んだそれらの建物の裏手はまさに、誰も足を踏み入れないような薄暗くて、ちょっぴり狭い道が奥の方までひっそりと続いており、密談をするにはうってつけの雰囲気を醸し出していた。
俺は先輩の後ろについてトボトボと歩いていく。

(一体なんの話をしたいのだろうか?)

「先輩・・・。今朝・・・俺の匂いに気が付いたでしょ?」

俺は恥ずかしさが強かったものの、遠回りに聞くのは耐えられなかった。
だから単刀直入に自分から切り出したのだ。

「えっ?あっ・・・。う、うん・・・」

「やっぱりな・・・。それで先輩は俺のことをからかうために誘ったんでしょ?」

「違う!それは違うよ・・・。坂下君がそんな風に感じていたなんて・・・」

「じゃあどうして?どうしていきなり奢ってくれるなんて言い出したり、下駄箱で俺のことを待ってたりしたんですか?今までそんなことは一度もなかったのに・・・」

「あたし・・・。あぁ、恥ずかしい・・・」

「えっ?」

なんだか顔を真っ赤にしながら俺の目をまともに見ることもできずにオロオロし、手をパタパタさせて、どう切り出せばいいのか落ち着きなく視線を彷徨わせている。

「じ、じつは・・・。あたし、今朝の坂下君のような匂いがとっても好きなの・・・。あの匂いって・・・」

そこで消え入るように小さな声になる。

「以前はなんの匂いなのか全然判らなかったの。だけど男子の中に時々あの匂いの人が居て、なんて言うんだろう?あたしにとってはフェロモンっていうのかな?すごくドキドキしちゃうんだ」

そこで胸の中心部分を両手で押さえるような仕草をする。
目はなんとなくウルウルとしているようだ。
だけど俺には信じられない。
はっきり言って生臭いし、俺自身は不潔で大嫌いな匂いだと思っている。
それに最高に恥ずかしい匂いだとも思っていた。

「だけど、他の子は気が付かないんだ。『ほら、今すれ違った男の人の匂いだよ』っていくら訴えても・・・」

表情が真剣だ。
どうやら本気で話していることは間違いないようだ。
だから俺も黙って先輩の話に耳を傾けた。

<続く>

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