31歳、今は幸せ男の昔話

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何年前になるかな・・・。
大学行ってた時だけど、俺って高校まで堅物でさ。
親が歳いってるせいもあって結構厳しい家でさ。
志望大学もチョイ無理目だったせいもあって、女の子と付き合った事もなくてさ。

そんなヤツが大学受かっちまったんで、当然遊びたいよな?
だけどそんな簡単にハイそうですか、なんて女の子いないし、彼女なんて中々出来なかったんだよな。
コンパ行ったって話し掛ける事も出来ないし、向こうから声掛けられても、真っ赤になるだけ(笑)
思えば純情だったな。

だから必然的に男ばかりと遊ぶ訳。
そんな友達の中にSって奴が居た。
コイツは女の子にもモテたし、元々都会育ちだったもんで・・・なんて言うかな。
俺にとっては師匠!みたいなモンだった。
金は持ってなかったけどいい奴だったよ。

Sに色んな相談もした。
どうやったら女の子と話せる?とか、どうやって付き合うのか?とかね。

Sは色々アドバイスしてくれた。
俺はその頃メガネ掛けてたんだけどコンタクトにしたりとか、服装とか今に流行りはコレだとか、髪はこうしたら・・・とかね。
まぁSのお陰もあって徐々にだけど、俺も変わってきたんだよ。

あれは2年の時のコンパだったと思うけど、ネルトンごっこが流行ってたんだよ。
それでその時は女の子から告白するバージョンだった。

Sは「俺、あの子いいなぁ」なんて言ってた。

俺も可愛い子だなぁと思ってたけど、まぁ無理だろうと思ってたし、Sだって無理だろうとも思ってた。
一番可愛い顔したし、皆彼女を狙っていたと思う。

そして告白タイム。

なんとその彼女は俺の前に立ったんだよ。
驚いた。

「お願いします」

彼女にそう言われたのも驚いたけど、周りの男連中からの嫉妬の眼にも驚いた。
まさか俺がこんな事で羨ましがられるなんてさ。

そして俺は彼女と付き合いだした。
名前は『M』にしとこうか。

楽しかった。
初めての彼女だったし、何よりも自分がドンドン変わっていく、自信がついてくる気持ちってのかな?楽しかった。

だけどやっぱり、俺はオクテだったんで、Sにも相談してたんだよ。
セックスに持ち込めないんだよってな。
Sは何故かその相談には親身になってくれなかった。
その時は余り気にしてなかったけど、後から分かったんだよね。

ある日、Sと俺のアパートで飲んでると彼女から電話が入った。
今から遊びに来ると言う。

「あぁ、今Sと飲んでるんだ。三人で飲もうよ」

暫くするとMが来た。

色んな話してて、盛り上がった。
気がつくと酒が切れてた。

「俺ちょっと酒買ってくるわ」

そう言ってふらつく足で立った。

「じゃぁ俺、チュウハイ頼むわ」
「私は・・・そうだなぁ・・・お摘み欲しい~」

「分かった、行って来るよ」と俺は玄関から出た。

階段降りて、ありゃ?財布忘れた事に気がついて戻った。
玄関開けて部屋に入ろうとしたんだが、2人は話しが盛り上がってて俺の気配に気がつかなかったみたいだ。

何話してるんだろうなぁ?って思って聞き耳たてたんだ。

「ねぇMちゃん、何故アイツが良かったのさ?」
「え~何故って?」

「俺、Mちゃん好みだったんだよね」
「え~そうなんだー?」

・・・なんて会話していた。

そうしたらSが・・・。

「でもあいつエッチしないでしょ?」
「え~そうだけど・・・」

「たまにはしたいでしょ?セックス?」

オイオイなんてこと聞いてんだよと思い、驚かせようと襖に手を掛けたその時・・・。

「俺で良かったらどぉ?」

Sがそう言っているのが聞こえた。

当然、彼女は断ると思ってた。
彼女の返事はなかった。
代わりに長い沈黙があっただけ。

俺は想像するしかなかった。
あそこで襖を開けていたら、チョットは俺の人生も変わってたかな。

沈黙の後・・・。

「ダメ・・もうすぐK(俺ね)が帰って来るし・・・」と彼女の声が聞こえた。

俺はキッチンに置いてあった封筒(家賃を払おうと準備していた)を取って、そっと玄関から出ていった。

たぶんキスをしていたんだろうな、あの2人・・・。
自分でも動揺していたと思う。
何を考えてあんな事したんだろう?

酒屋で買い物を済ませ、公衆電話から自分の部屋に電話した。
暫くのコールの後、Sが出た。

「どうした?」

「いやさ、欲しい酒が店になかったんで、もう一軒の方に行って来るよ。だからあと3、40分掛かるよ」

そうしてまた俺は部屋に戻った。
今度はワザと足音を殺して。

確信めいたものは有ったんだが、やっぱり聞いたことのない彼女の声と言うより喘ぎか。
押し殺しているつもりなんだろうが、漏れてくるような・・・。

「ん、ん、はぁ、ん、ん・・・」

あの時の音は忘れられない。
童貞だった俺だが、中で何が起きているかは手に取るように分かった。
自分で怒っているのか、興奮しているのか分からなかった。
ただ・・・ただ・・酷く体が熱かった。

「あ、あ、ぁ、ぁ、ああ、ああっ!」

彼女の声が高まってきた時、俺は居た堪れなくなって、またそっと部屋から出た。
階段の処に座り込んでビールの蓋を開けた。
ぐーっとビールを飲んで、夜空を見た。

自分で今の気持ちが整理付かなかった。

頬を何か冷たい物が零れただけだった。
時計を見たら、電話してから30分くらいしか経ってなかった。
なんだかどうでも良くなって、2本目を開けた。

涙はもう出なかった。
眼が乾いてきてる。
同時に心も乾いて来るのが分かった。

「もうそろそろ戻らなきゃな」

ヨロヨロと立ち上がり玄関の前に立った時、フイに中からドアが開いた。

「お!心配してたぞ!Mちゃん、K帰ってきたよ~」

「あーん、心配してたんだよ~」

「何やってたんだ?オマエ?」

その後の会話は余り憶えていない。
それより不思議な映画を見ていたような感じだった。
2人がつい先ほどまでやっていた行為よりもショックだった。

何故平然としていられるのだろう?
殺意ってのはこういう気持ちなのか?

・・・って、思った記憶がある。

その後も俺はMと付き合っていた。
無論Sとも。
セックスもした。
誘う時も自然に出来たなぁ(笑)
そりゃそうだよな、彼氏以外の男とも(しかも俺の友人と)平気で出来る女だから、嫌われたって良いんだから、遊び感覚でサラって誘えるさ(笑)

結局大学卒業するまでMとSとは続いた。
たぶん偶にはMとSは関係があったと思う。
2人とも連絡がつかない事があったし、SはMとのデート代を俺に借りにきたくらいだ。
(これは想像だがたぶん当たっていると思う)

だけど俺は素知らぬフリを続けた。
卒業間近になって俺はMと婚約した。
・・・と言っても、卒業して休みに入ったら、俺の故郷の両親に会わせる約束をしただけなんだけど。
彼女の方も概ね同じ認識をしていたと思う。

卒業前にまた、三人でアパートで飲んだ。
色んな話をした。
皆ベロベロになってた。
俺は酔いながらも頭は冷静だった。
深い水の底に段々沈み込んでいくような感じかな?

俺「引越しは来週中にするからさー」

S「お、手伝おうか?」

俺「いや、散らかってるから来てもらうのも迷惑なんだよ(笑)秋くらいには専務の奥様って言われてるんだよ~」

M「え~、なんて返事すれば良いのぉ~」

S「ちぇ!金持ちは良いよなぁ!!」

俺はたぶん、その時一番Mに優しかったと思う。
色んな夢をMから聞いて、俺はMに色んな夢を聞かせた。

俺の実家は小さいながらも、工場を営んでた。
オヤジが一代で築いた会社だ。
ここまではホントの話だ。
ただ一つの嘘を除いてな。

実家の所在地は2人に明かしてなかった。
他の奴にも。

俺は翌日、荷物をダッシュでまとめて帰った。
置き手紙も残さずに。

あれから11年経つけど、あの2人どうしてっかな?
案外ケコーンしてたりしてな(笑)