レズのお姉さんに頼まれたショック療法・第1話

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高校に通うようになって3ヶ月ほど経った頃のことだったが、気付いたことがある。
クラスに時代遅れのヤンキー女がいるのである。
私立の高校なので校則では問題にならない程度なのだが、休み時間など実にヤンキーらしい態度をとっていた。

まず、気の弱そうなやつにパシリをさせる。
自分の席ではないのに「おい!どけ!」と命令し、勝手に席を占領する。
授業は一応全部出ており、中学生のようなやりたい放題が高校でも通用するとはさすがに思っていないようなのだが、実は逆に性質が悪い。
宿題をやってるやつから否応なしにノートを奪い、勝手に写す。
もう死んでくれと、クラス中が思ってるに違いない。

そんなやつが、2人いるのである。
リーダー格の順子。
ロングヘアーで整った顔立ちに時代遅れのヤンキーメイクをしており、言葉使いが悪く、目つきも悪い。
その子分のような形でいつも順子の側にいる美晴。
ショートカットでボーイッシュな感じというか、もうアレは男である。
喋り方がもう男の口調で、目が釣り上がっており、顔を見るだけで怖い。
胸の膨らみと体型はさすがに女のそれであり、むしろそれで辛うじて女だと判別可能なくらいである。

もう1人いた。
僕だ。
無理やり仲間にさせられたと言った方が正しいのだが、同じクラスになった時に目を付けられてしまったのである。
突然だが、僕は昔から、よく女に間違われる。
可愛い系ではなく、むしろ“女なんだか男なんだか分かりにくい”という類の中性的な顔立ちというのだろうか。
それなのである。
気が弱く、女に見えるということで無理やり仲間にされてしまったのである。

放課後、欲しかったゲームソフトを買いに行こうと学校を出ようとしたところ、やはりというか、順子に捕まった。

「おい、勝手に帰るんじゃねーよ、武」

武とは僕のことである。
キッとするどい眼差しを僕に向けた。
横にニヤニヤしている美晴もいる。
美晴はすかさず僕のわき腹に拳を叩き付けた。

「いたっ」

僕がそう声を出すと美晴は僕の腕を両手でギュッと掴みながら後ろから僕の肩にあごを乗せ、「勝手に帰ったら寂しいでしょ」と息を吹きかけながら首筋をレロッと舐めた。

「うわっ、やめてよ、気色悪い」

「ああ?」

美晴にガンを飛ばされながら、今度は順子が前から抱きついてきた。
いや、サバ折りをされているというのが正しい。

「武ぃ、勝手に帰ったら私、寂しくなっちゃうでしょ?ほら、こんな風に」

順子はそう言うと、より一層僕の体を強く締め上げた。

「いたたた!!痛い痛い!!分かったから!!」

「いや、たけちゃん分かってない」

今度は美晴が甘い声色を出しながら腕を締め上げてきた。

「誰がたけちゃんですか!!いててて!!2人とも痛いって!!」

開放された後、僕の全身は悲鳴を上げていた。
正直、嫌で仕方ないものの、ヤンキーと言えど女であり、いい匂いがした。
順子は暴力的で、クラスから煙たがられているものの、それでもさっきみたいにくっ付かれると、たとえサバ折りであってもスケベ心が出てくるというのは男の性なのかもしれない。

美晴はもう性格から行動から男顔負けで、いつかヤンキー男とガチの殴り合いをやっていたのを見たが、むしろだからこそ、もしもこいつに彼氏とか出来たら性格が180度変わりそうだなとか想像して、そのギャップ萌えを楽しんでいると急激に可愛く見えてこなくもない。

そんな事を2人に開放されてからボンヤリと考えていたのだが、相変わらず時代遅れのヤンキーメイクの順子と、拳に息を吹きかけながら「もういっちょいっとく?」とか言っている美晴を見て、瞬時に現実に戻されていったのだった。

「なんですか今日は・・・僕、用事があるんですけ・・・」

「ああん!!!?」

美晴の拳が僕の耳の1ミリ横を通り過ぎた。

「い、いや・・・なんでもないです・・・」

「ついて来な」

そう言われ、僕は順子と美晴に両手をがっちりホールドされたまま、どこかへ連行されていった。
『絶対に逃がさねえよ』と言わんばかりに両腕をガッチリホールドされ、まるで捕獲された宇宙人のような格好でどこかへ連れて行かれる僕。
これが普通の女の子だったらどんなに幸せだっただろうか。

どこかへ向かう途中、僕は自分のこれまで生きてきた16年間を振り返っていた。
小学校ではクラスのイジメに徹底的に無関係なポジションで『我関せず』を決め込み、中学では運良く不良グループとは違うクラスになり、友達もそこそこで実に波風のない人生を送ってきた。
人間、こんな事がずっと続いていくと勝手に想像してしまうものだが、今の僕は一体なんであろうか。
生粋のヤンキー丸出し女と、『性別、間違えたんじゃねえの?』と問いたくなる“男女”の仲間になっているのである。
しかも、色気もないくせして、色気で僕をだまくらかしているつもりなのである。

先程の順子によるサバ折りも、順子は心の中では、『ほうら、女に接近されてドキドキするでしょう』などと考えてやがるに違いないのだ。
美晴も男みたいなくせして、腕を締め上げる時はしきりに胸を押し付けてニヤニヤしていた。
『ふふん!どうだい?私の胸は?』とか考えている顔だった、アレは。

「エロ漫画でも読んで勉強してこい、このボケ!」と、心で呟いた僕だった。

あくまで心で。
実際に言うと怖いから。

突然だが、実際に僕に対して周りが抱く印象とはかけ離れた性格だと、自分ではよく思うことがある。
自分の人生に波風が立って欲しくないから、周りには当たり障りのないことを言うものの、心の中では正反対のことを思っていたり、ということがよくある。

中学生の頃、家の近所に可愛い大学生がいた。
よく休みの日なんかに会うので一度挨拶したことがあるのだが、その時のそのお姉さんの第一声はやっぱり、「え?あなたって男の子だったの?」だった。
(男以外の何者でもないだろ!)とムカッと来たものの、表面上は、「ああ、よく言われるんですよ。分かりづらい顔でしょ?」とか言って話を合わせていた。
まだ声変わりが済んでいない頃のことだから余計に分かりにくかったかもしれないが・・・。

それから妙なことが起こるようになった。
行く先々でそのお姉さんに会うのだ。
最初は(偶然だなぁ)とか思っていたものの、次第に(つけられてるんじゃないか?)と思うようになった夏休みのある日、両親が旅行で3日ほど留守番を任されていた僕は、突然の訪問者に良からぬ気配を第六感でビンビン感じ取っていた。

「武くん・・・」

挨拶程度で、確か名乗ってはいなかったはず・・・。
怪訝な顔つきで僕が覗いた先には例のお姉さんの顔があった。
見るからに様子がおかしい。
不審者丸出しである。
しきりに目線を僕から外してはチラッと目を合わせるという行為を繰り返し、実に気色が悪い。

「お姉さん、なんですか?よく僕の家がわかりましたね?」

一見優しく聞いたものの、なんだがモジモジしており、告白のために体育館裏に呼び出した女の子みたいな感じである。
とりあえず「上がってください」と中に招き入れると、お姉さんは「お邪魔します」とポツリと言った後、勝手に2階の僕の自室に向かっていった。
僕が、「僕の部屋は2階です」とは言っていないのにである。
無言で階段を上がっていくお姉さんを見て、ゾクッと背筋が凍りついた感じがした。
初めて来た家で、一発で僕の部屋を当てたのである。
当てたと言うか勝手に入って行ったんだが。

とりあえずこっちは男、あっちは女だし、何かあってもぶん殴れば勝てるよなとか自分に言い聞かせつつ、とりあえずジュースを用意して2階に持って上がった。
ドアを開けた瞬間、機敏な動きで何かをタンスに入れたお姉さんの姿があった。
まるでエロ本を読んでる時に急に家族に部屋に入ってこられ、高速でエロ本を隠したようなそんな感じである。
怪しいものを見るような顔つきの僕と、あくまでシラを切っているつもりらしいお姉さんが妙な空間を作っていた。
さすがの僕も喋る気がせず、お姉さんと対面して妙な空気を保っていたのだが、かといってお姉さんはなかなか話を切り出さず、ひたすら僕が出したジュースをすすっていた。

(何なんだ・・・親しいわけでもないのに・・・)

「武君・・・男の子なんだよね?」

やっと口を利いたと思ったらそれである。
僕にとっては散々され続けた、ウンザリ系の質問である。

「そうですけど、何か?」

あからさまにムッとした態度でそう言った時だった。

「やだ・・・もう我慢できない!!」

お姉さんはそう言うと、ネズミを四つ角に追い詰めた猫のような目でガバッと僕に向かって飛んできた。
それがあらかじめ計算し尽くしたかのような速度と正確さで、おまけに僕の後ろにベッドがあったせいで、ベッドの上に吹き飛ばされる僕と、上に覆いかぶさってるお姉さんがいた。

「ちょ、ちょっと!!」

僕はそう言うと、とりあえず上にのしかかってるお姉さんを下からグイッと押しのけようとした。
しかし、マウントに近い形でのしかかられてる僕は思った以上に力が出なくて、反対にお姉さんは力任せに僕の腕を押しのけ、隙間がないくらいピタッと抱きついてこう言った。

「反則よぉ!そんなの反則なんだからね!!ずるいよ武君!!」

意味不明である。
僕が反則だと言うのである。
正直、オナニーさえしたことのなかった僕にとって、この状況は興奮どころでは全くなく、(何かやばい事態になった!!)という、むしろ身の危険を感じる事態だった。

(何されるんだ?)を頭の中で繰り返す僕。

力で引き剥がそうとするも上からガッチリ抱きつかれており、逃げようにも力が入らず、まさに窮鼠猫を噛めねえよ状態である。

「そんな顔して反則だよ!この卑怯者ぉ!!」

「お姉さん・・・痛い・・・」

「私だって心が痛いよぉ!卑怯者!反則技だよ、こんなの!!」

意味不明な言葉を繰り返すお姉さんに狂気を感じた瞬間だった。
しばらく「卑怯者」「反則」を繰り返していたお姉さん。
しばらくお姉さんに動く気配はなかった。
密着していて暑苦しいのだが、次第にある一つのことが僕の精神を狂わせていった。
お姉さんの心臓の鼓動である。
お姉さんが次第に喋らなくなり、僕の部屋に妙な沈黙が訪れていたのだが、密着した肌を通してお姉さんの心臓の鼓動が伝わってきた。

ドクンドクンドクンドクン・・・。

信じられないくらい高速で音と振動を僕に伝えるお姉さんの心臓。
こんなに速い心臓の鼓動を感じたのは初めてである。
次第にシーンとした静寂とお姉さんの心臓の鼓動が僕の頭の中を掻き回していった。
あまりにもバクバクと音を立てるお姉さんの心臓。
肌を通して直接、僕の体に伝わる鼓動。
一度も経験したことのないお姉さんの心臓の鼓動がだんだん僕に移ってきた。
お姉さんと一緒に徐々に僕の心臓も速く鼓動していった。
それはお姉さんの心臓が僕の心臓に、「一緒にドクンドクンしようよ」と誘いかけてくるようだった。

顔が熱くなってきた。
心臓の鼓動はどんどん速くなっていく。
次第にお姉さんの心臓と僕の心臓が一つになった感じがした。
頭がボーっとする。
正常じゃない。
変な感覚だ。
メダパニでもかけられたかのような感覚だ。
リンクした僕とお姉さんの心臓の鼓動が速く大きく一つになるにしたがって、脳がお姉さんのことを好きだと勘違いを起こしてきた。

(お姉さんと離れたくない。ずっとこの心音を感じていたい)

僕はそう感じ始めていた。

30分はそうしていただろうか。
お姉さんはギュッと僕を抱き締めたまま動こうとしなかった。
でも、それがいつしか心地良く感じていた。
お姉さんが突然、顔を上げた。
体はピッタリくっ付けたまま、僕の顔の左にうずめていた顔をゆっくり上げ、僕の顔の正面に持ってきた。
鼻と鼻がくっ付く。
お姉さんの荒い息遣いが僕の口にふうっと当たった。
顔が近すぎる。
お姉さんは両手で僕の顔を挟んで鼻と鼻をくっつけ、じっと僕の目を見つめていた。
お姉さんの心臓の鼓動がより一層速くなった気がした。
お姉さんは僕の目を見つめながら、心臓の鼓動を楽しんでいるようだった。
僕が目線をそらすとお姉さんは、あからさまに不機嫌そうな顔つきでぐいっと両手で顔を正面に向けさせ、僕とお姉さんの目線を交差させることを強要した。
お姉さんは次第に眉を八の字にしながら、目を細め、何かに耐えるような表情をしていた。
お姉さんの心臓の爆音と交差する目線で僕は気が変になりそうだった。

「あ・・・もうちょっと・・・もうちょっとで・・・」

お姉さんはそう言うと目線を不意に逸らし、ギュッと目を瞑ると口を近づけてきた。
ゆっくりと近付いてくるお姉さんの唇。
僕はキスをするんだと察した。

しかし。

お姉さんはあと5ミリ、いや、1ミリ近づければ口と口が当たるという位置で止まり、キスをしようとはしなかった。
僕はギュッとお姉さんの両手で顔を固定されており、全く動かすことは出来ない。
口と口とが近すぎる。
1ミリくらいしかないんじゃないのか。
でも決して当たっていない。
お姉さんも目が一層至近距離に来る。
お姉さんの口から息が漏れ、僕の口の中に入ってゆく。
お姉さんはハァハァ言いながら、息を僕の口の中に入れていった。
お姉さんの息遣いが脳に響く。
恐らく、傍から見たら僕とお姉さんはキスしてるように見えるのだろうが、実際は口は当たっていないのである。
超至近距離にあるだけだ。

お姉さんの顔がとても大きく見える。
肌のうぶ毛が見えるくらい近い、お姉さんの顔。
お姉さんは僕の中に息を吹き込む度に密着した全身をブルッと震わせ、嬉しそうにニヤッと笑った。
そして僕が吐いた息をお姉さんは口から口へ吸い取っていた。
お姉さんの鼻からわずかに漏れる鼻息がこそばゆい。
僕は普通に息を吐いたり吸ったりしてるだけなのだが、お姉さんは僕の口に口を近付け、僕が息を吐くとお姉さんはそれを吸い、僕が息を吸うとお姉さんはそれに合わせて自分の息を僕の中に吹き込んで吸わせた。
息の交換である。

一瞬ゾワッとしたものの、次第に脳がボーっとしてくる。
お姉さんの息が美味しい。
もっとお姉さんの息が欲しい。
お姉さんの甘い息が吸いたい。
お姉さんも僕の息を吸いたいらしく、僕が息を吐く時は目を細めてトローンとした顔で吸っていた。
心音が、僕もお姉さんも通常の2、3倍のスピードでバクバク言っていた。

<続く>