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付き合って一週間で彼女の家に転がり込んで3ヶ月。
おかしいなぁ?とは前々から思っていたんだけど、俺が帰らない日を物凄く執拗に確認する子だったんです。
「今日は何時ごろかな?」とか。
駅から歩いて15分と田舎なので、駅に着いたときに、『駅着いたよ、なんか買ってく?』みたいなメールを毎日してたんですよね。
年が明けて、一月も中盤に差し掛かる頃に会社の新年会があって、『今日は帰らないよ』とメールしといたんです。
でも酒飲んで、同僚とわいわいエロ話してたらなんだか急にムラムラしちゃって。
(寝込みを襲ってみたい!パジャマな彼女を無理矢理気味で、あーだこーだしたい!)
勃起しちゃって、二次会途中で抜け出してすぐさま帰宅。
駅着いてメールする余裕も無く欲情してて、玄関をガチャっと開けたら男物の靴とコートと手袋・・・。
一瞬、彼女のお兄さんかな?と思ったんですが、ワンルームのリビングを見ると・・・騎乗位で、それも中出し中。
「うあぁ!」とか言ってる男と、「出して!中に頂戴!」とか言ってる彼女。
俺、茫然自失。
こいつ、前々から怪しいと思っていた男で、それも結婚してる。
いつもメールしてきて、俺が「何でメールしてるの?」と聞くと、「友達。奥さんいるし、何も無いからメール出来るんだよ、心配し過ぎだよー」と言っていた奴。
さらに、誕生日とか以外にもケーキとか買って、俺が居ないのを見計らってか、家で二人でケーキ食べてたり、メールも『今日は空いてる?』とか、『会えないの?』『彼氏と居るから今日は会えないね』とかそんな事ばっかりだった。
もうひとつおかしいなと思ってたのは、彼女がピル飲んでたこと。
彼女は『セーフセックス』だと主張、俺は『中出しされたいからでしょ?』という意見対立で何回か喧嘩してた。
確かに俺も中出しして気持ちよかったのは確かですよ。
でもなんか腑に落ちない。
「俺の為に」と彼女は言っていたが、“この男のため”でもあったわけだ。
話を戻しますね。
茫然自失とは本当の事で、声を出そうにも、「あうあう」言うだけだし声が出てこない。
さらに、立っている足が前にも後ろにも行かなくて、まるで棒のような物に変身してしまったんじゃないか?という錯覚さえ覚える。
目の前の、二人で選んだダブルベッドの上で、騎乗位で腰を抱えられたまま細い身体に突き刺されている彼女と、むっちりとしたメタボな身体を横たえて下から腰だけ微妙に浮かせた状態で固まってる男。
三人とも何も言えない。
固まってる。
一番最初に口を開いたのは男。
彼女を脇に退かすと、彼女は素早くバスタオルで身体を隠し、男も下半身を隠す。
だけど・・・、ほんの一秒にも満たない時間に見えた二人の股間はてろてろに光ってて、男が彼女に大量に出したのが判ってしまう。
彼女の陰毛は撫で付けられたようにびちょびちょだった。
男「あー、これは・・・これは違うんだ」
続いて彼女。
彼女「ね、ね、聞いて。これは違うの!違うの!」
ふと我に返る。
理由は、俺の足を噛んでる奴が居る。
彼女のペットのウサギだ。
こいつは可愛くて、俺にもやっと懐いたんだけど、靴下と素足の境目が好きでそこばかり狙って噛んでくる。
うさぎの牙はかなり痛い。
本気でやられると二つの穴が空くほど痛い。
そのペットがガリガリと俺の脛を噛んでいる。
俺「な・・・なにが?なにが違うの?」
涙なんて流すつもりはなかった。
浮気しているんだったら俺の知らないところで上手くやってくれて、俺にはわからないように墓場まで持って行ってくれればそれで俺は良かった。
俺の前では可愛い、小さい彼女でいて欲しかった。
が、目の前の半裸体の二人と、それに終わったばかりの行為を見せつけられて、俺の涙はボタボタと床に落ちていった。
でもそれがスローモーションの様にゆっくりとなんですよ。
ウサギがそれを鼻につけてびっくりして飛び跳ねる。
叫びたかったが、なんかぼんやりと走馬灯というのか、楽しい思い出が頭の中をぐるぐる回る。
というか冷静に部屋を360度見渡すという感じ。
一緒に選んだベッド。
安いけど二人で頭乗せて納得して買った枕。
俺が寝る時間が遅い時に片側だけ明るくする為に買ってきた読書灯。
柄で揉めたベッドシーツ。
「最近使い過ぎだね」と笑い合って買ったティッシュケース。
腰をいたわる為に買った一番高い低反発のベッドマット。
お揃いで買ったコーヒーカップには、俺のじゃないコーヒーが半分入ってる。
二つ並んだ写真立て、一つはウサギ、一つは彼女と俺・・・。
二人で貯めて買った液晶TVとブルーレイレコーダー、買ったばかりのDVDがテーブルに転がってる・・・、きっと二人で観たんだろう。
ケーキ屋の包み紙と半欠けのチーズケーキ・・・、彼女、嫌いなのに食べたんだ・・・。
俺のバスタオルは男が巻いてる。
脱ぎ散らかされた彼女の下着と男の洋服。
下着は股間の部分が濡れて変色していた。
ブラジャーはベッドボードに引っ掛かってた。
彼女が立ち上がる。
ベッドシーツには黒っぽいシミが出来ていた。
彼女「ねぇ?怒らないで!お願い!聞いて!」
なんか叫んでる。
でも正確にはきっと聞いてない。
(こんなにも俺は冷静でいられるのか?)
自分でも不思議なくらいだったんだ。
でも思った、この部屋をC4爆薬で二人もろとも吹き飛ばしたいって。
机にはお揃いのソフトバンクの携帯、機種と色も同じだ。
「ドコモの俺に使えない、高い、デザイン悪い」と散々いちゃもんつけた彼女は、結局その男と同じものを使っていた。
さらにストラップもお揃い。
「あのさ、なにやってんだよお前ら!」と言ったのが、きっと彼女が今まで聞いたことのない俺の声だったはず。
ビクン!と肩を震わせた。
俺は暴力振るう人じゃないし、平和主義というか話し合いしようよ!というタイプだし、揉めても自分が折れればこの場は万事上手くいくと思えば謝るようなタイプ。
彼女の前では本気で怒った事ないし、自分でもキレたら自分がどうなってしまうのか、なんて知らないで生きてきた。
男「あのさ、冷静になろうよ。色々訳がありそうだし」
何故そんなに二人ともビクビクしてるのかと思ったら、1Kの部屋だから、俺の手の届くところに包丁があるんですよ。
俺は玄関開けて、キッチンと言える代物じゃないけどそこを通り過ぎる前に足を止めて、リビングが見渡せる位置に居るから。
男は俺より年上そうだった。
ごめん、スペック言ってなかったね。
俺:25歳。
彼女:26歳。
男:30オーバー。
付き合って3ヶ月とまだまだ青いっす。
彼女は安めぐみと佐藤藍子を足した感じ。
背は150cm後半と小さい。
でも不思議と出てきた言葉は物凄く冷たかった。
それは自分でも未だに不思議。
俺「続きやれば?」
彼女が突然すすり泣き始めた。
彼女「だから・・・だからダメだって言ったのに」
まるで男のせいにしてるような言い草。
男「そのさ、大人の話し合いをしようよ」
(金で解決するつもりなのか?)と思ったが・・・。
男「この場はさ、一旦帰るから、また後日ちゃんと話し合おうよ」
逃げるつもりなのがわかった。
俺「どうぞ、どうぞ!続きしてくださいよ、こいつ何回もイケる女ですよ!」
男「ちょっと!彼氏君!落ち着いて話そうよ」
すすり泣く声が大きくなる。
俺「第二関節くらいでヘソ側に指曲げてやるとこいつすぐイキますよ。それに、潮吹いて腰振りますから。どうでした?見つけましたそこ?」
男「そんな事今言わなくてもいいよ。ちょっと着替えるから待ってて」
俺「聞きたいんですけど、名前と住所と携帯番号教えてもらえます?」
男「そ、それはまずいよ。僕には奥さんがいるし・・・」
俺「ふーん・・・」
彼女が立ち上がる。
ムカつくのは精液が太腿を濡らしていることだ。
彼女「もう、帰って、二人とも帰って!」
俺「まぁ、着替えなよ、俺待ってるから」
男が俺に釣られて・・・。
男「そうだよ、彼氏君がそう言ってるんだから着替えようよ」
なんというやつ!
面白半分に俺は包丁を握ってみた。
二人の動きが即座に止まる。
男「彼氏君!はやまっちゃダメだよ!話、しないと解決しないよ」
彼女「ちょ・・・なに?なにするつもりなの、離して!」
テーブルに置いてある携帯電話を二つとも引ったくるようにポケットに入れた。
男「仕事の打ち合わせに使うんだ!返してくれないか?」
彼女「いあやぁ!だめ!絶対だめ!返して!」
ウサギを抱えて自分のバッグに入れようとしたが、藻掻いて入らないので残念だけど諦めてしまった。
俺は包丁をナイフ入れに入れると踵を返し、無言で玄関を出た。
そして彼女の自転車をドアノブにかけて、開かないようにワイヤーロックで巻いてやった。
自分でもびっくりするほど開かない。
開けようとするとハンドルがドアノブに当たって開かない。
その前にノブ(レバータイプ)が、回そうとしてもハンドルの先端に邪魔されて回らないようになっていた。
タイヤが通路側溝に引っ掛かってドア側から押してもタイヤが踏ん張って開かない。
そしてタイヤ側のロックをして、鍵を裏の駐車場に投げ飛ばしてやった。
まだ着替えてるのかドアをどんどんと叩く音は聞こえない。
中で、「あぁーあぁ」という様なため息と悲鳴に似た叫び。
(携帯二つどうしようかなぁ?)
そう悩んでいたんだけど、近くのスタバまで歩いてゆっくりコーヒーを飲んだ。
実際味なんてどうでもよかった。
味覚なんて無いに等しい。
苦いものが飲みたかった。
男の名前は判らなかったが着信先に電話して、「この携帯拾ったんですけど・・・」と言うと簡単に名前を教えてくれた。
『◯◯修』という名前だった。
彼女の携帯を見ると見事にロッキング!
暗証番号を・・・50回ほど試すが全然ダメ。
修君の誕生日を探す。
メールの中に奥さんからのメールと思われる、『明日、誕生日だね』というメールを発見。
早速彼女の携帯にアクセス。
試す事5回、見事ビンゴ!
まずは常套手段からいきますかね。
と思いついたが、平和主義というか、「話せばわかる!」と修君が言ってたというのが頭を過り、(本当に話せばわかるんだろうか?)としばらく考えた。
でも、答えはNOだった。
今まで一番頭に来たことを限界点だとすれば、それをとっくにオーバーしているのが今回の事態だった。
<続く>
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