死の淵から その3 -手紙-

この体験談は約 3 分で読めます。

田中や美鈴さんの話を聞きながら、私は妻の心境を思い、また私自身の甘えや不甲斐なさを感じ、私自身も変わらねばと思うのです。
私は妻にいつも変わらぬ愛情で私を守ってくれる母親を求めていて、桂木諒子という一人の女性を求めてはいなかったのかもしれません。
妻も間違いを犯す平凡な人間であることを許さなかったのは、他でもない私自身なのでしょう。

今、妻を一人の女性“桂木諒子”として愛せるのか、私には分かりません。
しかし、私の中にはいつも諒子がいて、このまま諒子のことを何も知らないで諦めることはどうしても出来なかったのです。
私は、田中に今の私の気持ちを綴った手紙を渡し、諒子に渡して欲しいと頼みました。
私は返事が来るまで何回も手紙を書きました。
どんな事実があろうとこれから2人で乗り越えていきたいと。
どれほど苦しくても絶対諦めないと。

妻からの返事が初めてきたのは、妻が出て行ってからもうすぐ1年経とうする頃でした。

---最初の手紙---

まず最初に貴方にあのようなことをしてしまい、本当に申し訳ありません。
そしてあなたに謝ることも出来ないまま、あなたの前から姿を消してしまったことを私は悔やんでも悔やみきれず、いつか誠心誠意謝りたいと思いつつも、弱い私はあなたに手紙を書くことも出来ませんでした。
そして日が経つにつれ、美鈴さんから立ち直って行くあなたのことを聞き、嬉しく思うとともに、私がいなくても大丈夫だという事実に自分勝手ながらひどく打ちのめされていました。

今更だと思われるかもしれませんが、本当にごめんなさい。

あなたの手紙にお返事を書くことを今まで躊躇っていたのは、私自身あのことを貴方に知られるのが怖かったという思いもありますが、貴方が私を過去のこととして乗り越えるために、真実を知りたいと思っているのなら、私にはどうしても教えることが出来なかったからです。
最後まで自分勝手な女と笑ってください。
それでも私はせめて貴方の記憶の中では、今までの良かった私のままでいたく、あのようなことをしてしまった女だと思われるのが本当に怖かったのです。
しかし、貴方の手紙を読むにつれ貴方も私も真実を知って乗り越え無ければ、過去にとらわれたままで未来を見られないと感じました。

私は、あのことを知られるのが本当に怖い。
真実を全て語り終える頃には、貴方はきっと私を軽蔑するでしょう。
それでも、真実を語るのが貴方に出来るせめてもの償いと思い、貴方の望むように私が犯した罪を告白したいと思います。

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妻の最初の手紙は短いものでした。

しかし、次から送られてくる内容は非常に驚くべきものでした。

私は男との関係を知る段階になり、妻の告白を読んで行くともっと詳しく男とどういう行為をしたのか知りたい欲求を抑えられません。
妻は詳細な描写は出来るだけ省いていましたが、私は、妻がどういうことをされどういう風に男の手に落ちたのかどうしても知りたかった。
そして妻のされた行為を想像すると、嫉妬で胸が苦しく、妻がされたことを知らなければ先に進めないと思っていました。
私は卑怯にも妻の私への負い目を利用し、妻に行為の部分の告白も要求しました。
しばらく返事が滞りましたが、妻も決心したのか、かなり詳細に妻と男の行為の内容からそのときの心境まで生々しく書かれていました。

私はその告白を読み、辛かった妻の心境と、卑怯な男の行動に怒り、そしてやはり妻を取り戻したいと心から思うのです。

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