マイケル・ジャクソンのJAPANツアーの陰で

この体験談は約 8 分で読めます。

もうかれこれ20年近く前になるだろうか。
当時、日本いや世界を席巻してたマイケル・ジャクソンのJAPANツアーが決まった頃。
大学生だった俺はサークル内に友里というものすごく好きな子がいた。

「マイケル・ジャクソン見たい」

友里のその一言で俺はありとあらゆる伝手をたどりプラチナチケットを探していた。
会場は横浜スタジアム、アリーナのそれも前の方でなければマイケル・ジャクソンだか誰だか判別がつかない。
今もそうだが、発売日の電話予約なんていつまでも繋がりやしない。

その時バイトしてた先に誰もが憧れる智美ってアイドル的な女の子がいた。
誰もが美人として認め、何人もの男が彼女のことを狙っていた。
俺にとってはあまりにも高嶺の花すぎて、恋愛感情とかそんなものはなく、ホント素の自分を曝け出してバイトのシフトが同じ日は友達のように談笑してた。

心の中では「誰かがそのうちこの子の彼氏になるんだろうなぁ。やっぱりジャニ系顔の裕也が本命だろうな、誰が見ても理想のカップルだし」なんて思いながら・・・。

ある日智美に俺がサークルに好きな人がいること、マイケル・ジャクソンのコンサートを見たがってること、そんな話をした。

そしたら、思いも寄らぬ言葉が・・・。

「私、電通に知り合いいるからもしかしたらチケット取れるかもよ」

もう二つ返事でお願いした。
2~3日後、また同じシフトに入った彼女にチケットはどうなったのって聞いてみた。

「ううん・・・もうチョット待ってて」

なんとも歯切れの悪い言葉。
やっぱり手に入れるのは難しいか・・・半ば諦めかけていた。
何日か後、シフトは違ったがバイト中の俺のところに智美が来た。

「チケット取れたよ~」

飛び切りの笑顔でチケットを振りかざす。
俺が喜ぶべきことなのにまるで自分のことのように喜ぶ彼女。

「その子とうまくいくといいね♪失敗したら許さないよ」

ホントいい子だわぁ。
もう有頂天な俺は、コンサート後に告白→カポー成立のゴールデンサクセスストーリーが、脳内で出来上がっていた。

「お前もきっといい彼氏が見つかるよ。俺が保証する」

なんて高飛車なセリフまで飛び出す始末。
そして迎えたコンサート当日、席に向かう俺達は改めて感激した。
アリーナの最前列ブロック!もう舞台は目の前!

「こんな席よく手に入ったね♪」

無邪気に喜ぶ友里。
智美には心から感謝した。
友里のその笑顔隣でずっと見ていたいよ。

やがて公演がはじまりマイケルが舞台の下からせり上がって来た。
周りも俺達も熱狂の渦に飲み込まれていく・・・。
始まりは『Start Something』。
今の俺にピッタリだ。

(今夜これが終わった後、俺達は始まるんだ)

おなじみの『スリラー』『ビリージーン』などの曲とダンスを間近て堪能し時間が過ぎていく。

やがて公演終了。
周りの名残り惜しさを打ち消すようにナイターに明かりが灯される。

(これから俺のステージが始まるんだ)

超満員のスタジアム、なかなか人ははけやしない。
特にアリーナは後回し。
やっと外に出られると、駅へは長蛇の列。

「ちょっと話してから行こっか?」

スタジアムの回りの公園のベンチに腰掛ける。
しばらく他愛もない話をしてたら、段々と人影もまばらに・・・。

(今しかない・・)

「友里、もしかしたら気づいているかもしれないけど、俺お前のことが好きだ。付き合って欲しい」

俺のステージが始まった。
いや、俺達のステージだ。
色良い返事を期待し友里の顔を見上げると・・・。

「???」

明らかに戸惑った感じの友里。

「いや・・・いい・・・今は返事しなくていいから」

内心そう思った矢先、友里の口から・・・。

「気持ちはすごく嬉しい、でも1年前に別れた人のことまだ引きずっているんだ。だから、まだそういうこと考えられない」

当時流行っていたねるとん紅鯨団にしてみたら、まさに『大・どんでん・返し』だ。

「友里が癒えるのをいつまでも待っているよ」

そう言うのが精一杯だった。

だが、その返事が返ってくることはなかった。

ほどなくして友里はサークルを去った。
風の噂で同じサークルの1年後輩の男と付き合ってると聞いた。
チケットが取れたことで彼女の心を掴んだ気でいた俺は、打ちひしがれた。

それに追い討ちをかける智美の言葉。

「もう、せっかくチケット取ったのにフラれたんだって?」
「あぁ」

「ちゃんと気持ち伝えたの?」
「あぁ」

「しつこいくらい言った?何なら今からまた言いにいけば?」
「もう無理だって・・・」

「バカ!意気地なし!チケット無駄にしてぇ!」
「ごめん・・・」

(きついよ智美・・)

そんな傷心からやや立ち直りかけたある日、バイト仲間の謙二と話していた時のこと。

「お前、智美の話聞いた?」
「えっ?なんのこと?」

「そっか・・・」
「おいおい何だよ。教えてくれよ」

「絶対智美には俺から聞いたなんて言わないでくれよ。いや、聞かなかったことにしてくれ!約束できるな?」
「約束する」

「お前智美にマイケルのチケット取ってもらっただろ?」
「あぁ」

「智美がどうやって手に入れたか知ってるか?」
「電通に知り合いがいるからって言ってたけど・・・」

「その知り合いなんだがな、智美にアプローチかけてるヤツなんだよ」
「・・・」

嫌な予感がよぎる。

「智美何でもするからチケットが欲しいって手に入れたらしいんだよ」
「・・・」

次の言葉は聞きたくなかった。

「チケットの代わりにそいつに抱かれたんだってよ」
「きっ・・・汚ねぇ・・・」

もう正常の精神状態じゃいられない俺。

「ごめん。俺、チョット早退するわ」

タイムカードに向かう俺を謙二が制する。

「どこに行くんだよ?おい!」
「智美と話してくる」

「チョット待て、約束と違うだろ!」
「ゴメン、でも知ってしまった以上話さないわけにはいかないし、まず謝りたい」

「俺だって悔しいんだよ!俺の気持ち知ってるだろ?それでも耐えてんだよ!謝ったって済んでしまったことはどうしようもないだろ!」

謙二が智美に好意を持っているのは聞いていた。
謙二が今どんな気持ちでいるのか痛いくらいにわかる。
でも、やっぱり智美には謝りたいし、電通の野郎をどんなことしても聞き出して1発喰らわせなければ気が済まない。

「そんなことしなければならないならチケットなんていらないよ」

独り言のように呟いた。

「謙二、ゴメン!」

制止を振り切り、タイムカードを突っ込み俺はバイト先を飛び出した。
・・・かといって携帯電話なんて物はまだ無い時代の話。
探すっていっても家に電話することしか術はないが、智美は不在。
智美の通っていた大学、サークルで使っていると聞いたテニスコート、お気に入りのお店・・・。
そんな時に限って智美はどこにも居ない。
その間、何度も智美の家に電話を入れるがまだ帰宅していない。

もう探すあても無く、智美の家で待とうと思い、最寄りの大森駅へ向かう。
駅に着いた列車は大勢の人を吐き出す、と・・・何両か先の出口から智美が出てきた。

向こうもこちらの存在に気付き驚いたように目を丸くして・・・。

「どうしたの~?!こんな所で?」

だが、俺の尋常じゃない顔つきを見て察したのか・・・。

「もしかして何か聞いた?」
「あっ・・・あぁ」

「そっか・・・ねぇちょっと話さない?」
「うん、そうだね」

なんかもう泣きそうだよ。
二人は線路沿いにある公園へと向かった。

程なくベンチを見つけ腰掛ける。

「智美ゴメン!俺の為に◯×#%※▽☆」

もう半泣き状態の俺は言葉にならない。

「いいの、いいってばぁ」
「良くないよ、智美を嫌な思いさせて、謙二だって傷つけちゃったし・・・俺が欲しいなんて言わなければ・・・」

「いいよ、よっちゃんの嬉しそうな顔見れたし」
「えっ???」

「よっちゃん全然気付いてないでしょ?」
「何言ってるんだよ?」

「なんで私が一生懸命チケット取ったかっていうと、よっちゃんの喜ぶ姿が見たかったから」

すると突然涙声になって・・・。

「バカだよねぇ・・・わたし」

ようやく智美の気持ちに気付いた。
もうあまりの自分のバカさ加減に涙が止め処なく溢れた。
拭っても拭っても止まらない。

今までどんなに無神経に智美に接してきたことか。

自分が好きな子がいるって相談してみたり、智美はいい人が見つかるって言ってみたり。
今思えばどんなに智美を傷付けてきたことか。
挙句の果てには電通・・・。

なんでだよ?智美だよ?
智美がその気になれば誰だって選べる立場じゃん?
裕也にしろ謙二にしろ男の俺から見ても格好いい。
なのに、よりにもよってなんで俺なの?
智美に奢ってやったのなんかモスバーガーだけだし。
褒めたことなんて一度もないし。

そんな思いが頭の中を駆け巡り、ただただ泣くばかりであった。
ひたすら泣いた後、智美が愛しく思えた。
今まで知らず知らずのうちに押し殺していた感情が芽生え始めた。
勝手に高嶺の花と決めつけ、心の奥底にしまっていた本当の俺の想い。

「智美ぃ」

隣で同じように泣いていた智美の背中を抱き寄せる。

「女にフラれて落ち込んでるからってバカにしないで」

離れようとする智美をさらに強い力で引き寄せる。

「もう智美に辛い思いはさせない。俺が智美を守り続ける。俺はやっと気付いたんだ」

恥ずかしい言葉がなぜかスラスラと出てくる。
智美の抵抗する力が弱まり、お互い向き合う形になった。
そしてどちらからともなく唇を寄せ合った。
二人とも涙でぐちゃぐちゃだ。

智美との初めてのキスは柔らかくそしてしょっぱかった。

「色々遠回りしたみたいだから、今日は智美とずっと一緒にいたい」

「うん、私もよっちゃんと話していたい。伝えたいこといっぱいあるんだから」

なんとも萌えさせてくれるお言葉。
すぐ近くの大森駅には東急インがあるが、貧乏学生の俺には敷居が高い。
手持ちはないし、クレカなんて持ってやしない。

仕方ないので、なんとなく知っている大森海岸の方へ向かう。
この辺りは何軒かホテルが隣接しているが、当時でさえどことなく場末感が漂っていた。
部屋に入ってもまた声を失う。
なんとも言えない淫薇な明かり。

「ごめん、こういう所あまり知らなくて・・・」

「いいよ、よっちゃんが居てくれれば」

なんとも泣けてくるお言葉。
やっと止まった涙がまた溢れてきそう。
今の俺ならばすぐにでも戦闘開始だ。
まだ純情な部分が残っていたあの時の俺は、ただベッドに腰掛けていた。

しばらく二人で横になり話し合った。
なんで俺のこと好きになったのか、そのとき初めて知る。
他の男は多少なりとも、智美を誉め、格好つけたり、色々プレゼントしたり・・・そんな男を見て、いったいどれだけ自分の中身を見てくれているのか疑問だったそうだ。
確かに俺はそんなことは一切なかった。
他の女友達と同様、飾ることなく接してきた。
そんなのがいいなんて、つくづく女心はわからねぇ・・・。

でも、そんな想いを抱えて今まで接してくれてたのかと思うと、どこか心地よかった。
数時間前までどん底まで落ち込んでいた気持ちが嘘のようだ。
すっかり智美に癒されたと同時に、心の堰が決壊したようにどんどん智美を愛しく感じた。

お互いの想いを語り合った二人は、また自然と唇を重ねる。
でも、今度は公園でしたそれよりも深く熱いものだった。

キスしながら智美の髪、耳、頬、首筋などに手を這わせる。
時折、「うぅ・・・」と吐息を漏らす。
もう愛しくて止まらない。

次第に俺の手はスリムな体型な割に豊かな膨らみへと伸びる。
智美の吐息が長くやや大きくなる。

「あぁぁ~っ」

もう、俺は止まらない。
智美のウェスト、お腹を経由してスカートをたくし上げる。
誰もが夢見てるであろう智美のアソコへ下着の上から擦ってみる。
熱い、そしてすでに湿っている。
智美は恥ずかしさを隠すかのように俺にしがみつき、さらに激しく舌を絡めてくる。

もう智美の全てが見たい、俺の全てを見て欲しい。
興奮で震えが止まらない指は少し乱暴に智美の服を剥ぎ取っていく。
想像もしなかった智美の裸体。

「綺麗だ・・・」

他に言葉が見つからない、大きく張りのある乳房、くびれたウェスト、しなやかに伸びる脚。

もうその先ははっきりと覚えていない。
全てが夢の中の出来事のようだった。
俺達は朝が来るまで何度も何度も抱き合った。

未だに夢に見るあの日の出来事。
俺の忘れられないSEX。

あれから20年近くが過ぎ、たぶん俺は電通野郎に近付いたかもしれない。

マイケル・ジャクソンは知っての通りだ。
でもCDの中の歌と思い出だけは今も色褪せない・・・。