会社のアイドルと1対1の野球拳・第1話

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以前同じ会社に勤めていた裕美ちゃんは、ベビーフェイスで背も小さめだけれど、意外とスタイルは良くて、なんというか男心を惹かずにはいられないって感じの魅力的なOLさんでした。
性格も明るくて会社のアイドル的な存在だったように思います。

まだ学生気分が抜けないのか、会社に来るのにミニスカートだったり、ちょっと派手めの胸元が大きく開いている服を着てきたりと、少し小悪魔的な雰囲気もある女の子で、男性社員にも人気でした。
そんな裕美ちゃんなので若い男性社員から誘われたりすることも少なくなかったようですが、案外、人間関係とかには如才がないようで、男性関係の浮いた噂とかはまったくありませんでした。
飲み会などでも、大人数の場だけを選んで参加しているようで、短大を卒業したばかりの新人で、子供っぽくて騙されやすそうな外見なのですが、本当のところは思ったよりもしっかりしていたのかもしれません。

会社では私の部署に所属していて、課のメンバーは裕美ちゃんと私、それに部長と年配のパートさんが1人の4人でした。
他の男性社員から見れば、裕美ちゃんを独占できる職場環境で、羨ましすぎるという感じなのでしょうが、実際には私も中途で入社したばかりのこともあり、毎日が残業という状態で、そんな余裕はまったくありませんでした。
部長とパートさんは2人ともお酒を飲まない人で、そんなこともあり職場で飲む機会など一度もなく、私の歓迎会も、ちょっと豪華な昼食を一緒にごちそうになった程度でした。
営業などの部署の人たちは酒豪も多く、よく裕美ちゃんを誘いに来ていましたので、飲み会などで彼女と親しく触れ合う機会は彼らのほうが、私よりもずっと多かったように思います。

そんな感じで、私が転職してから3ヶ月ほどが過ぎました。
仕事のほうでは10歳ほど年上の私を頼りにしているようで、彼女独特の“男あしらい”なのかもしれませんが、「お兄さんみたい」などと、懐いてくるようにもなっていました。
可愛い裕美ちゃんに頼られれば満更でもない気分にはなりますが、『男性としては意識していない』という感じは明らかで、まあ楽しくもあり、少し残念でもありという日々でもありました。

そんなある日、夜の10時くらいまで残業して1人帰宅するべく駅へと急いでいると、何やら10数人の集団が前方にたむろしているのが見えます。
どうやら飲み屋から出てきて、二次会の相談をしている集団のようでした。
近くまで歩いていくと見慣れた顔が並んでいて、うちの会社の連中だというのがわかりました。
そして当然のように、その中には裕美ちゃんもいました。
私は彼女と飲んだことがないので、飲んだ時の裕美ちゃんが普段はどんな感じなのかは知りませんが、少なくともその日はかなり酔っぱらっているように見えました。
年配のK課長にしなだれかかるようにして、ネクタイの胸のあたりにちょこんと頭を軽く触れるような感じで、「酔っぱらっちゃった~」などと言っています。

やっぱりちょっと隙があるのかな、この娘は・・・。
まあ大人数だし、変なことにはならないだろうけど・・・。

私は苦笑いしながら、そのまま通り過ぎようかとも思いましたが、やはりちょっと心配にもなって声をかけました。

「あれ?裕美ちゃん、大丈夫かい?」

酔っているせいか私に気づいていない感じの裕美ちゃんでしたが、声を掛けられて気づいたのか・・・。

「あっ、先輩(私)だ!先輩~、裕美ちょっとだけ酔っちゃったので、車で送ってくださ~い」

そう言うなり私の二の腕を掴んで、すぐ先の大通りまで引っ張っていきます。
あっという間に自分でタクシーを捕まえて、私を押し込むようにして乗せてしまいました。
呆気にとられている私をよそに、裕美ちゃんは「新宿までお願いします」と案外しっかりとした口調で運転手に告げていました。
かなり酔っ払っているのではないかと心配していた私にしてみれば、ちょっと拍子抜けした感じです。

「なんだ、そんなに酔ってないじゃない。それなら1人でも帰れたんじゃないの?」

裕美ちゃんはクスッと小さく微笑むような感じで答えました。

「なんだか二次会を断りづらい感じだったし、女の子が少なくて、迫られたりとかしたら面倒じゃないですか・・・。それに1回、先輩と飲んでみたかったんだ。全然誘ってもくれないんだから、ちょっと寂しいですよ」

どうやら心配はまったく無用だったようです。
どうせ、一緒に飲んでみたかったというのは社交辞令で、都合良くタクシー代を奢らせる気なんだろうと思いましたが、まあ可愛い妹分みたいなものです。
どこでタクシーを降ろしたものかと聞きました。

「家は新宿から電車だっけ?」

すると裕美ちゃんは・・・。

「まだ飲み足りないんです。雰囲気のいいショットバーがあるんで付き合ってくださいよう~」

予想外のことを言います。
本当に私と飲むつもりのようです。
それにどうやら行きつけの店も結構な数ありそうな感じです。
私も苦笑しながら同意しつつからかっていました。

「え~、まだ飲むの?大丈夫?それに僕も迫ったりするかもしれないよ?」

そんな、からかうような脅し文句に少しでも怯むような裕美ちゃんではありませんでした。

「3ヶ月も一緒に仕事して、一度もお酒にも誘ってくれない狼さんはいませんよ~。今日は先輩の奢りでGOGO!」

笑顔でそう言われては、さすがにこれ以上心配するのは野暮というものでしょう。
結局ショットバーへ行って、結構強めのカクテルなどを飲みながら話していました。
でも、その程度では裕美ちゃんのパワーは全く収まらず、さらにもう1軒、居酒屋で飲むことになりました。
裕美ちゃんは酒処の県の出身で、外見とは違ってかなりお酒は強いようでしたが、さすがに最初の飲み会から3軒目ともなると、だいぶ酔いもまわってきたような感じに見えました。
彼女のお酒は酔うとハイになるというか、ますます陽気で元気になるのがくせのようでした。
3軒目の居酒屋では、とりとめもない話ばかりしていたのですが、酔いもあったのでしょう、何かの拍子に話題が変な方向へと行ってしまいました。
彼女の飲み会での武勇伝(?)などを聞きながら、職場の同僚である年長者としては、一応窘めるように言いました。

「飲み会もいいけど、女の子なんだから、あんまりハメを外しすぎないように気をつけなきゃだめだよ」

裕美ちゃんは、そんな小言は少しも意に介していないようで陽気な感じで答えます。

「は~い、お兄たま~。でもストレス溜まりますよう。先輩こそたまには、少しくらいはハメ外したほうがいいんじゃないですか~」

他愛もない言い合いですが、これがそれから会話が脱線していく始まりでした。

「こう見えても君よりは人生経験が長いからね。男だし、これでも学生時代とかは結構ハメも外したもんだよ。ちょっと言えないようなことだって結構あったかなあ、もう30過ぎだからね、さすがに最近はないけどね」

裕美ちゃんは、それを聞いてますます陽気に絡んできます。

「え~見えないです~、先輩、いつも仕事しか興味ないみたいだから。例えば、どんなふうにハメを外しちゃったんですかあ。聞きたい聞きたい!」

私は、あまり体格がいいほうではないのでパッと見はそうは見えないのですが、学生時代は体育会系で、先輩の命令で結構過酷な宴会なども数をこなしてきたものです。
なのでその手の話には事欠きません。

「結構色々だよ、宴会で男同士で野球拳やって、負けてパンツ一丁になって表通りを走ったりとか」

苦笑混じりに、軽い下ネタというか、そういう感じで何気なく口にしたのですが、まさかこのセリフに裕美ちゃんが食いつこうとは思いもしませんでした。

「え~野球拳ですか~。やってみた~い!ちゃらららら~っていうやつでしょ、面白そう。裕美も1回やってみたいなあ」

思わぬ反応にちょっと驚きながらも、まあ無邪気というか、ある意味この娘らしいなと思わず笑ってしまいました。

「普通、女の子が野球拳やりたいって言うかな~、わかってる?負けたら服脱ぐんだよ」

裕美ちゃんも、それは知っていたようです。

「だって面白そうじゃないですか~。心を開いてる相手なら、ちょっとくらいまでならOKだし、ドキドキですよ~、面白そう、やってみた~い」

やれやれ、小悪魔的というか、どこまで本気なのか?
大人をからかっているのか?
それでもまあ話の流れで、結構酔ってるみたいだから、セクハラだとか言われはしないだろうと、からかうつもりでふざけて言ってみました。

「それじゃあこれから2人でやってみる?」

裕美ちゃんは間髪入れずに答えました。

「え~、やりたい!やりたい!野球拳やろう~!!」

嘘だろ~~!
野球拳だぞ~!
こんな可愛い女の子が、「やろう!」っていうか!

まったく予想外の反応です。
その瞬間まで本当になんの下心もなかったのですが、この瞬間に心の中で何かが切れました。
それは、こんな可愛い顔をして、いつも若い男性社員を手玉にとっている(だろう)裕美ちゃんを、場合によっては本当になんとかしてやろうという・・・まあごく普通の魂胆です。
それから先の私のセリフは先程までとは違って、今度は下心があるだけにドキドキものでした。

「う~ん、でも、さすがにここじゃ上着の1枚も脱げないな。どこか行こうか?2人きりになれるところじゃないとできそうもないよ・・・」

裕美ちゃんは子供のように可愛いらしい顔つきはしているけれど、それはそれ、さすがに今時の女の子ですから、「2人きりになれるところ」の意味は十分よくわかっているようです。
それでも全く怯みません。
そんなに私は人畜無害と思われているんだろうか?

「いいですよ~。でも、本当の本当に、絶対なんにもしないっていう約束ならですけどね」

「本当の本当に」と言うところにかなり力を込めてそう言うと、続けます。

「変な期待をしても無駄ですよ~。本当に野球拳がしてみたいだけですからね、そこんとこよろしく」

口調はしっかりしていますが、どんなに人畜無害と思われていようと、男と2人でラブホに行こうということ自体、普通ではありえません。
裕美ちゃん本人は気づいていませんが、やはりかなり酔っているのでしょう。
今考えれば、アルコールで思考がルーズになっていたとしか思いようがないのです。
でも、私にとってはラッキーなことでした。
うまくすれば会社のマドンナ裕美ちゃんの下着姿くらいは拝めるかもしれないのですから。

「野球拳だけで十分すごいけどなあ。わかった、それ以外は絶対になんにもしないって約束するよ。そのかわり、野球拳は容赦しないからね」

そんなやりとりの末、居酒屋を後にすると、コンビニでさらに酒(ウイスキーとウォッカ!)を買い込み、怪しげな歌舞伎町を抜けて、さらに怪しげな新大久保方面のラブホ街に向かい、その1軒に入りました。
裕美ちゃんといえば、ラブホに入るというのにまったく躊躇するところもなくて、「絶対、恋人同士だと思われてるよね」とか「不倫カップルとか思われてたりして」などとはしゃぎながらエレベーターに乗ります。
3階で下りて、ちょっと重そうなドアを閉めるなり、私は振り向いて裕美ちゃんを抱き締めました。
彼女の首に手を回してキスをしようとすると、予想に反してすごい力で突き放されました。

「ちょっと~、だめですよ~、そんなことするなら本当に帰りますよ!本当に絶対なんにもなしだって、あんなに言ったのにまったく!」

さっきまでのほのぼのとした口調から一転して、本当に怒気を含んだ喋り方になっています。

トホホ・・・本当かよ~。

それでもここまで来たら、へこたれていても仕方ありません。
私も何事もなかったように聞きます。

「シャワー、先にする?」

『きっ!』という感じで裕美ちゃんに睨まれてしまいました。

「何考えてるんですか~、本当に野球拳だけですよ。1回でいいからやってみたかったんだ」

内心がっかりしつつも、本当に怒って帰るといった徹底的な拒否に遭わなかったことに、ほっとしてもいました。
まあそれに、もしかしたらではありますが、野球拳の先にあるかもしれないことを想像すれば、それはそれで心が高鳴るというものです。

「ごめん、ごめん、悪気はないんだ。あんまり裕美ちゃんが可愛いから、つい、ね?やっぱり一応こういうところだから、もしかしたらそういう気持ちもありかなとか・・・。今ので本当に野球拳をしたいだけって、よ~くわかったから、もう絶対しないよ、安心して」

帰ってしまわれないように私は必死でした。
裕美ちゃんも、それほど本気に怒っているようではありませんでした。
私は相手の気が変わらないうちにと思い、何事もなかったかのように話を続けます。

「それじゃあ、負けたら、このコップにウォッカをここまでついで、一気飲みしてから1枚脱ぐっていうルールでどう?」

野球拳だけではなくて、一気飲みのオプションルールをつける提案です。

「私はいいですけど、先輩大丈夫ですかあ、これ(ウォッカ)強いですよ~」

お酒には自信があるらしい裕美ちゃんは、ちょっといたずらっぽく笑いながらOKしました。
でも実は私、超が付くくらい酒は強いのです。
体育会系仕込みです。
裕美ちゃんもかなり強いのでしょう。
自信満々ですが、私より早くから飲んできたはずですし、ショットバーでも居酒屋でもかなり飲んでいたので、ちょっと呂律も怪しくなりかけているような感じです。
ウォッカの一気飲みをさせれば酔って判断ができなくなるかもしれないし、そうすれば下着姿はおろか、場合によっては生おっぱいくらいまで拝める可能性もないとは言えません。
裕美ちゃんは本当に自分の酒の強さに自信があるのでしょう、私の下心を知ってか知らずか、一気飲みオプションをかえって面白がっているようです。
私はネクタイを少し緩めると、喉が乾いたので冷蔵庫からビールを出して2つのグラスに注ぎました。

「それじゃあ、これから第1回、野球拳大会を始めます。ルールは負けたら一気飲み&1枚脱ぎです。音楽と振り付けは知っているね?」

裕美ちゃんもノリノリで答えます。

「知ってますよ~、ちゃららら~、アウト!セーフ!でしょ」

昔懐かしい、あの野球拳の振りつけをしながら答えます。
しかし若い女の子がラブホテルに男と2人で野球拳・・・。
やっぱり裕美ちゃんは、ちょっと変わっています。

「それでは2人の健闘を祈って乾杯!」

2人でグッとグラスのビールを飲み干しました。
さあ、いよいよ、生唾ものの、会社のアイドル裕美ちゃんとの野球拳のはじまりです。
大人2人が歌いながら例のポーズで踊ります。
傍から見ていたら、ちょっと笑える眺めかもしれません。

「やあきゅうう~、す~るならあ~、こういう具合にしやしゃんせ」
「アウト」
「セーフ」
「よよいのよい!!」

私はパー!
彼女はチョキ!!!

負けた~!!!

仕方がありません。
ウォッカを一気飲みして(うへ~、マジ効く、この酒強すぎじゃないか?)、両方の靴下を脱ぎます。
ちくしょう~、このまま終わらせてたまるものか。
次は必ず勝ってやる。
さすがに1回でやめるとは彼女も言いません。

「さあ、次いってみようか」
「や~きゅうう~~・・・よよいのよい」

私はグー!!
裕美ちゃんはチョキ!!!

やった~~!!!
勝ったあ~!!!

2回目は私の勝ちです。
神は私を見捨てなかった。
よっしゃあ~!
一気にボルテージがあがります。
初夏の季節、彼女の服装はミニスカ(OLとしては珍しい生足)にタンクトップに薄手のカーディガンだけ。

(これならすぐにエロいことに・・・!)

私の期待も高まります。
そんな私の思惑を知ってか知らずか、彼女は案外躊躇もせずに1枚脱ぎます。
まあ選択は当然のごとくカーディガンですが。
ちなみに、部屋に入るときに靴は脱いでスリッパなので、そのぶんだけでも進行が速いというもの。
その上、裕美ちゃんの、すぐにも脱ぐものがなくなりそうな薄着に対して、私は夏物とはいえスーツ姿でネクタイも着用しています。
じゃんけんの勝ち負けの確率が2分の1なら、長く続ければ、たくさん着ている私が有利なのは明らかでした。
問題はどこまで裕美ちゃんを乗せて、ギブアップさせずに楽しませてもらえるかです。

「あっ、そうそう、ちゃんと一気飲みもしてね」

意外と冷静に裕美ちゃんに罰ゲームを命じる私。
それはそうです。
とにかく、どのくらい酔わせられるかで、楽しみが随分と変わってきそうな雰囲気なのですから。
裕美ちゃんは酒が弱い人なら火でも噴きそうな強いウォッカをコップになみなみと注いで一気飲みします。
酒は相当に強いらしい裕美ちゃんとはいえ、3軒飲んできて、さらにこれは結構キツそうです。

「やばい、これ、本当に酔いそう」

ちょっと不安そうな表情になります。

「は~い、それではどんどん行きますよ~。や~きゅうう~・・・」

私は彼女が「やめる」と言い出さないように、間髪を入れずに次のゲームへと進みます。

「アウト、セーフ、よよいのよい!」

また勝った~。

「え~どうしよう~」

今度は、さすがの裕美ちゃんも動揺が隠せません。
あんなに薄着の格好で野球拳など始めて、先のことを考えていなかったのでしょうか。
まあ連敗するとは思っていなかったのでしょうが、さすがに躊躇しています。

<続く>

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