オカマバーのよしお

この体験談は約 21 分で読めます。

大学に入りたての俺は芝居をやり始めた。
ちっぽけなサークルの劇団だったが、結構楽しくやっていた。
そのかわりといっちゃあなんだが、全く授業には出ていなかった。
まあ俺の周りの人間も授業には出てなかったけど。

出欠がなく、試験だけで単位のとれる講義を、俺は一つだけ取っていた。
その単位だけは欲しかった。
全部不可ってのはかっこ悪いかなって思っていたから。

長い夏休みも終わって、しばらく経った頃、その講義が試験をするという。
噂を聞き早速、学校行って、教室見回し、一番真面目そうな女の子。
でもって、自分好みの子に声をかけた。

「ごめん。ノートとってる?・・・コピーとらせて!」と言ったら、拍子抜けするくらいあっさりOKをもらった。

彼女の近くに女友達がいなかったことも幸いしたのかもしれないけど。

「授業終わったら、学食来て!」

俺はそう言うと、速攻で教室を去った。

学食で待ってると、授業を終えた彼女がやってきた。
ほんとに来たんだというのが実感だった。
よく見るとメガネをかけた磯山さやか。
あんまし化粧っ気がなく、ジーンズとセーターっていう格好。
純朴な子。
名前は、美樹。
ノートも借りたことだし、学食のまずいコーヒーを彼女におごった。
ちょっと話してみると、俺が芝居をやってるのに彼女は興味を示した。
熱く芝居のことを語り、俺の夢も話した。
あっという間に時間が過ぎて、美樹と一緒に帰った。
メシは食った。
当然酒も飲んだ。
彼女の家と俺のアパートが同じ駅ってのも、神様が俺にチャンスをくれたんだなって。
送って行ったその日のうちにキスするタイミングがあったのだから。
それからはもう早かった。
数日のうちに美樹は俺の部屋にやってきた。

「初めてなの」

俺の耳元でそう囁き、俺はそっとキスをした。
美樹は俺に脱がされるのをいやがり、というより恥ずかしがっていた。
ユニットバスで脱いでバスタオルを巻いてきた。
電気を消してとつぶやき、俺にしがみついてきた。

そして・・・。

「・・・はうぅ。・・・いっ・・いたっー」

美樹は、必死に俺にしがみついてきた。

「・・・うぅうぅ、ふぅん・・・うう」

あえぎというより痛みにこらえる声のなかで、果てた。

それから、俺は美樹と何回か、した。
お互いぎこちなさは残るが、彼氏彼女ではあったと思う。
美樹は思ったほど、自分が大学であまり友達ができなかったことを気にしていた。
大学デビューを果たす野望があったんだけど、ふんぎりがつかないことを俺によく話していた。
俺は、メガネを外せばって、言うと、恥ずかしいからって言って、黙ってしまう。
大人しいってこういう子をいうんだって、美樹と会うたび、俺は感じていた。

「どうして、俺と付き合ってくれたの?」

「なんか、嬉しかったから」

「嬉しい?」

「うん、ナンパなんてされたの初めてだったから。それに、ユウスケくんってなんか自分の夢持ってて、かっこいいなって。あと、顔があたしの好みだったから」

性格は地味だけど、言う事は時々、ストレートな子だった。

事件はそんな時、起こった。

その日は、芝居を見に行った。
アバンギャルドな演出をする山内という先輩の芝居だった。
内容は社会批判だったが、はっきり言ってくそ面白くない芝居だった。
俺は、美樹を誘っていた。
デートするいい口実だったし、俺の芝居の顔つなぎにもなるからだった。
下らない演出をする割に、先輩は人材や宣材の宝庫だった。
芝居も終わり、小屋を出ようとすると、先輩から飲みの誘いがあった。
美樹もいたので、断ろうと思っていたが、彼女も一緒に連れて来いとの命令。
今後のことも考えると断りきれなかった。
そもそもこれが大きな過ちだった。

寄席の近所にあるその小屋の近くのいつもの居酒屋に行くのかなと思っていたら、先輩は『よっちゃんの店』に行くとのこと。
神社か墓地かなんかの裏手みたいなところで、結構歩かされた。
先輩、その友人A、B、俺、そして美樹は、その店に入っていった。

「いらっしゃいませー」と男の小高い声が聞こえた。

店内には、おっきなモニタとカウンター、そしてボックス席。
結構広めな造りだった。
普通の店っぽいのだが、普通ではなかった。
店員は全部で3人いた。
2人は派手目なメイクをした男。
1人は結構普通っぽい人。

「久しぶりねー。どうしてたのよ。全く」

甲高い声で、先輩に話し掛ける男たち。

ここはオカマバーだった。

「あらー。この子可愛い。私のタイプー」と俺にまとわりついてくるオカマ。

「もてもてだな」と俺を茶化す先輩。

その隣にすわって、お酒をつくってる一見普通の人がこの店のオーナー、よっちゃんだった。
ボックス席に陣取った俺たちというより店貸しきり状態。
俺がオカマにつかまっている間、美樹はというと隅っこでぽつんと座っていた。
ニコニコして決して場の空気を壊さないよう、頑張っていた。

俺はトイレに行くふりをして、美樹の隣に座ろうとした。
と、トイレに立つとそのオカマもついてきた。
こいつなんだと思っていたら、なんとオカマも中まで入ってきた。
その店のトイレは結構大きく作られていて、二人くらい入るのはわけないことだった。

「出ていってもらえます?」

「いいじゃなーい。男同士なんだからー」と、とりつく島がない。

仕方なく小便すると、オカマは横から覗き込んだ。

「あーらー結構おっきぃ。たべちゃいたーい」

殴ってやろうかと殺意がよぎった。

俺がトイレから戻ると、若干席順が変わっていた。
美樹のとなりによっちゃん。
先輩、A、Bとオカマ。
美樹はよっちゃんの話に笑っているようだった。
そこに、新しい客がやってきた。

俺についていたオカマは「あーらーお久しぶりー。元気してたー」とその客の方に行ってしまった。

俺はようやく美樹のとなりに座ることができた。

よっちゃんは面白いひとだった。
この町の歴史や伝説の人の話、自分の恋愛話。
もちろん男性とのそしてオカマになった話など。
飲ませ上手ってのはこの人をいうんだろうなっていうくらい飲んだ。
美樹もかなり飲んでいた。
俺が時計に目をやると、すでに美樹の門限は過ぎていた。

「どうする?美樹」

「えっ。どうしよう」という空気を読んでか、よっちゃんが電話を取り出した。

「ちょっとみんな静かにして」

そして、美樹に電話を渡して・・・。

「家に電話して。ごめん、今日泊まるっていうの。そのあとよっちゃんに代わって。大丈夫よ。よっちゃんを信じて」

美樹は電話した。

「もしもし。・・・ごめん。今日泊まる。・・・うん。だから、ごめん。・・・うん、ちょっと、ちょっと待って・・・」

・・・と、電話を渡されたよっちゃん。

「もしもし。ごめんなさいね。今日はね、・・そうなの。美樹ちゃんをお預かりしてるのよ。うちの娘とね・・・」

よっちゃんは完璧な美樹の友達のお母さんを演じていた。

「なにかありましたら、◯◯◯◯-◯◯◯◯まで電話くださいよ。・・・はい、お母様もぜひ今度はうちに来てくださいね」と、よっちゃんは電話を切った。

次の瞬間、店中に大拍手が起こった。
俺も美樹も拍手をしていた。

「さっきの電話番号は、もしかして」

「この店の番号よ。大丈夫。かかってこないから。それより美樹ちゃん、よかったね。一緒に飲もう」

美樹は大きく頷いた。
よっちゃんが言い出した。

「美樹ちゃん。メガネ取ってごらんなさいよ」

メガネを取る美樹。

「この子、ものすごくきれいな顔してるのね。羨ましいわぁ。でも、まだ化粧がぎこちないわね。してあげる」

そう言って、よっちゃんが美樹に化粧をし始めた。

そう、俺もメガネを外した美樹の顔は好きだった。
さすがはオカマ。
化粧もうまいし、男心もわかってる。

「・・・なんか、ものすごく恥ずかしい」

照れくさそうにする美樹。
よっちゃんのメイクもうまく、その辺のクラブやキャバならNO.1でも通用しそうな美樹がいた。

「へぇー。美樹ちゃんって言ったよね。そんな奴と付き合うのやめて、俺と付き合ってよ」と、先輩も言い始めた。

「馬鹿なこと言わないでくださいよ。先輩。彼女にいいつけますよ」

「あらら、怒らせちゃったかな。・・・そろそろ帰るかな」

先輩、A、Bが席を立とうとした。
俺も当然、帰るつもりだった。

美樹を見ると、まだよっちゃんと話していたが俺の素振りを見ると帰り支度を始めた。

「あらー。ちょっと帰るの。この子と美樹ちゃんは置いてってよね」と、俺と美樹の肩を掴んだよっちゃん。

「わかったよ。二人は人質だな。金なら心配しなくてもいいから。とりあえず、出しておくからな」

太っ腹な先輩だった。
ただ酒も誘われたら断りにくい要因のひとつだった。

先輩たちが帰った後も、よっちゃんの話は尽きることがなかった。
俺も美樹もぐてんぐてんになるまで飲まされていた。
とりあえず、意識があるうちに美樹を連れて、俺の部屋まで帰りたかった。

「そろそろ帰りまーす」

俺はよっちゃんにそう告げると・・・。

「あたしんちが近くだから、泊まっていけばいいじゃない。ね。そうしましょ」と、よっちゃんも帰り支度をして、なかば強引に俺と美樹を連れて行った。

実際、よっちゃんのマンションは近かった。
というより店の目の前だった。
よっちゃんの部屋に転がり込んだ俺たち。
リビングに通された。
ソファがあり、俺はそこに転がり込んだ。

「よっちゃん。ごめん。俺、ものすごく眠いわ。美樹は大丈夫か?」

ソファの上でごろんと横になる俺。

「もうしっかりして。ここ、よっちゃんの家なのよ」と美樹が言うが、意識はかなり飛んでる。

よっちゃんがオカマというのが、なおのこと眠くなる原因かもしれない。
美樹のことを安心して任せられる。

「美樹ちゃん。ほら、服きがえなさい。しわになるわよ」

・・・と、よっちゃんはトレーナーを出してきた。

「ありがとう。よっちゃん」

そう言うものの、美樹もかなり酒が入っている。
立てないらしい。

「らいじょうぶか。美樹」

俺も、呂律が回らない。

「もう、しょうがないわね」と、よっちゃんが美樹の服を脱がし始める。

「よっちゃん。なに?」

驚く美樹。

だが、よっちゃんはその手を緩めない。

「えっ、やだ。やめて」

脱がされまいとする美樹。
美樹の手をはねのけ、脱がすよっちゃん美樹の上着が脱がされた。

「あれぇ、美樹ちゃん、矯正下着つけてるの?」

「やめてよ。いい加減にして!」

手で下着を隠す美樹。
俺はよっちゃんを怒ろうにも起きあげられなくなり、声も出せなくなっていた。

「ごめんね。美樹ちゃん。・・・でも可愛いよね。最近の矯正下着。いくらくらいしたの?っていうより、◯◯◯製?」

こわばっていた表情がくずれ、半笑いの美樹。

「よっちゃん知ってるの?◯◯◯製を」

「もちろんよ。有名だもん。高いんでしょ。それに買い方が・・・あとで話しましょ。それより脱がないと、痕がつくというより・・・、体が限界でしょ」

微笑む美樹。

「はーい。でも、後ろ向いててね。よっちゃんでも恥ずかしいから」

トレーナーに着替える美樹。

「いいわよ。よっちゃん」

「メイクも落とさないとね。クレンジングもって来るわね」

俺は動けずにいたが、少しだけ意識ははっきりしてきた。
しゃべることは面倒くさいというより、しゃべってるのかどうかわからない変な気分だった。

どうやら、よっちゃんと美樹はリビングのとなりのベッドの上にいるみたいだった。
二人はまだ話してるみたいだった。
他愛もない話だろうと思っていたが、なんか様子が違うことに気づくのは、しばらくの時間がかかった。

「ねぇ、美樹ってどうされると気持ちいい?」

「えっ、どうされるとって、何の話?」

「セックスよ。セックス。彼とのセックスはどうなの?」

「やだ。よっちゃん。やめてよ。そんな話」

「どうして。興味あるもの。ノンケのセックスって、どうなのかって。ほら、あたしたちって、だめでしょ」

「だめって、なにが?」

「もう美樹ちゃんってば、Hなんだから。だから、セックスがよ。だって、ほら・・・あたしが好きになるじゃない。だけど好きになった人があたしを好きになってくれて、なおかつあたしとセックスしてくれるとは限らないでしょ。だから、愛される気分ってどういうのかななんて、すごく興味があるの。入れてもらえる気分ってどんなのかなって・・・」

「入れてもらえるって、えー、まだ、よっちゃんって、いれてもらったことないの?」

「大きなお世話ね。何回かチャンスはあったけど最後までいったことないわ。あぁ、でも、入れたことはあるわね。その人、ネコだったから」

「ネコって、女の人役のこと?」

「よく知ってるわね。そうよ。で、ほんとのネコの美樹ちゃんはどうなのよ?」

「わ、わたしぃ・・・。そ、そうね。気持ちいいって感じがまだちょっとわからないかなぁ。でも、入れられていると、気持ちいいかなぁー。うん。それより、愛されてるのかなぁ。なんて考えるよ」

「やってる最中に?」

「うん」

「もっーととか、めちゃくちゃにしてーとかは、思えないの?」

「えぇぇぇ、思わないよ。そんなに気持ちよかったのなんて、なかったもん」

「彼はまだまだだねぇ。こんなにいい体してるのにね」

「ちょ、ちょっとよっちゃん、やめてよ。さわんないで」

「きれいな体だよね。胸はE65?」

「えっ、や・・やだ。D70だよぉ。まだ」

「矯正されると、もっとカップが大きくなるよね」

「うぅん。もうちょっと大きく・・・。やぁ、やぁめぇてぇ、よ、よっちゃん!」

「可愛い!胸ちょっと揉んだだけなのにね。反応がいいわぁ。うなじなんて攻められたこと、ある?」

「いぃやぁ、もぅ、もうちょっと離れてよ。ユウスケに言いつけるわよ」

「寝てるわよ」

「起こすから。私、一途なんだから。それに、よっちゃんって、オカマでしょ。オカマなのに私に触るのって反則よ」

「ひどいわぁ。そんな言い方しなくたって。じゃれるくらいいいじゃなーい」

「じゃれるって、じゃれてるうちに入らないわよ。だって・・・」

「気持ちよかったんでしょ?」

「えっ、えっ!」

「私に触られて気持ちよかったです。っていいなさいよ」

「そんなこ、こと、なぃ。ない。私は彼が好きなの!彼のこと、あいし・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・、美樹ちゃんの唇って、おいしいね」

「よっちゃん。ひどい。ひどいよ。信じてたのに」

「可愛いからよ。美樹ちゃんが・・・。オカマの私が好きになっちゃうくらい。ねぇ」

「くぅー、帰る。あたし、帰るから。もう・・・」

「美樹ちゃん・・・」

「いやゃー。やめてぇーうぐぅぅぅぅ」

「・・・」

「・・・はうぅふぅ」

「ほんと、可愛い子だわ。美樹ちゃんって」

「なぁ、なに?よっ、よっちゃん。もぉ、ユウスケ、起きて!起きて!起きてよ!」

俺は、遠くでその声を聞いていた。
きっと夢の中の出来事なんだろうなとしか思ってなかったんだろう。

「起きないわね。もう観念しなさいよ。美樹ちゃん。大丈夫よ。じゃれるだけだから。ねぇ。じゃれるだけだから」

「やぁ、それでも嫌やぁ。そんなところ、さわらないで。うぅ、うそ!じゃれるだけだって言ったじゃない」

「美樹ちゃん、感度いいわぁ。嬉しくなっちゃう」

「もぅいい。もぅいいよ。と、といれにい、いくー」

「ここでしていいわよ。見ててあげるから。ね。美樹ちゃん」

「や、やめてよぉ、よっちゃん!あ~~、そんなこと、ね、ね、や・・め、よ。や、め、て」

「・・・」

「・・・あぁん」

「やっと、いい声が出たわね。どう?気持ちいいでしょ?」

「えっ、ぅん。ぃや。気持ちよくない」

「気持ちいいはずよ。ね」

「・・・」

「ねぇ、どう?ここぐちゃぐちゃされるといい感じでしょ?」

「・・・」

「男、オカマにもわかんないけど、気持ちいいんでしょ」

「・・・」

「ねぇ、どうなのよ」

「・・・あぁん。あん。あん。あん。あぁ~ん。はぅ」

「相当気持ちいいみたいね。美樹ちゃんは、可愛いからこのままいかせてあげる」

「あん。あぁん。あぁーん。あーーーーーん」

「どう、いったの?」

「はぁはぁはぁはぁ、な、なぁに。なに?わかんない。わかんない。わかんないよぉ~」

「もっと、分からしてあげるわ」

「えっ!えっ、え、え、えっち!ねぇやめよ!もうやめよぅよぉ~!・・・あぁ~~あぅんんん」

「なんか背中、弱いみたいねぇ。たっぷり攻めてあげる!」

「う、うぅう。あ~~ん。あ~~~ん」

俺が目覚めたのは、ぷ~んとコーヒーの香りがしたからだった。
一瞬、どこか分からなかったけれど、すぐに思い出せることは全て思い出した。
後半のよっちゃんと美樹のことはどうだったかは定かではなかった。

と、よっちゃんの部屋のキッチンから美樹の声が聞こえた。

「そろそろ、起こさなきゃね」

そして、よっちゃん・・・。

「そうだね。ちょっと寝過ぎだわ」

時計を見ると10時を回っていた。

「おはよ」と、俺は二人に聞こえるような声であいさつした。

よっちゃんの部屋を出た俺たちは、一回、家に戻ることにした。
着替えたかったし、なにより美樹の家が心配だった。

その帰り道、美樹は俺の手を組んだ。
初めての事だったし、なにより美樹からというのに驚いた。

「どうしたん」

「なんか腕組んでみたかったから。・・・ごめんなさい」

「なんか言った?」

「いやなにも」

俺は、ごめんなさいの言葉を聞き逃さなかった。
なんで謝っているのかわからないけど、なにかあったんだと俺は感じていた。

それから、俺は芝居の稽古を始めた。
かなり忙しくなっていたが、美樹とは時々はいつもの学食で会えてはいた。
その頃の美樹は会うたびにひとつずつ変わっていた。
メガネをコンタクトに替え、口紅もはっきりとした色に変わっていた。
服装も明るめのものに変わっていた。
あの夜、よっちゃんや先輩にほめられたのがよっぽど嬉しかったんだと思っていた。

「あの日の夜は楽しかった」

口癖のように美樹はつぶやき、俺は稽古に向かった。
昼夜かまわず稽古がある為、俺は美樹としばらくデートもHもしていなかった。

そんなある日、稽古を見に来た山内先輩が俺に言った。

「なぁ、よっちゃんの店にお前の彼女、美樹って言ったっけ。来てたぞ」

えっ、どういうこと?ってのがまず、頭をよぎった。

なんかよっちゃんに相談か?いや、でも一人で?
楽しいのわかるけど、オカマバーだぞ?なに考えてる?

稽古にも全く身が入らなかった。
頭の中は、美樹で一杯になっていた。

「今日は帰ります」と言い、俺は帰宅した。

悶々としていた俺に連絡があったのは、その日の夜のことだった。
今から来ていいかとの美樹の声に、少しだけ安堵を感じた。

そして、美樹は俺の部屋にやって来た。
慣れた感じで、俺の部屋に入ってきた美樹。
服装もかなり大人っぽい感じになっていた。
メガネはかけていなかった。

「ちょっと、外はさむいよー」

無邪気に微笑む美樹。
俺はその顔を見て、よっちゃんの店のことを聞くのはやめようと決めた。
今はここに美樹がいる。
それでいいじゃないかと。
と、俺は何も言わずに、ぎゅっと美樹を抱きしめた。

「どうしたの?な、なに?」

「美樹。好きだよ」と、俺は美樹の唇に触れた。

いつものようにキスした俺。

いつもの・・・?!

美樹の唇から舌が、俺の唇を割って入ってきた。
そして、美樹の舌は俺の舌に絡み付いてきた。
美樹の舌はねっとりと俺の口の中で、まるで生き物のように貪り動いた。
そして、いつものキスではない、キスを俺たちは終えた。

「嬉しい。・・・でも」

「でも?」

「なんでもない。続きしよ」

美樹ではない。
こんなに積極的なわけない・・・と思う俺の前で美樹は、「ほら、脱がせてね」と、挑発的に言ってきた。

美樹の服を脱がすって?
だっていつも風呂場で自分の服は脱いで、バスタオル巻いて・・・。

俺の頭は少し混乱していた。
見透かすように美樹は俺の手を取り、俺の手を自分の服を脱がすように添えさせた。

「ユウスケくん」

俺は、美樹の指示のまま、服を脱がせた。
そこには、赤いブラがあった。

「ねぇ、どう?これ?」

「いいんじゃないか」

そういうのが精一杯だった。
美樹らしくないけど、美樹なんだと言い聞かせて、行為に没頭しようとした。

「あぁん」

美樹の口からもれる吐息。
声を出すことさえ躊躇っていたのに・・・どうした?

「あ~ん」

俺は、美樹を抱くのを辞めた。

「美樹、どうした?なんかあったのか?」

「どうして?そんなこと聞くの?」

「なんかあったんじゃないか」

しばらくの沈黙。
美樹は、その沈黙をやぶった。

「・・・あったよ。なんか」

「なんかって?」

「・・・聞きたいの?・・・」

美樹の目は、聞くなと俺に言っている。

でも知りたい。
なにがあったか?俺は彼氏なんだから。

「・・・教えてくれ」

「・・・本当は今日、さよならを言おうと思って来たの。・・・でも、抱きしめられて、好きだって言ってくれたから。嬉しかった。・・・だから、どうでもよくなっちゃったの。ユウスケのことが好き。
好きよ。で、でもね」

「・・・」

「ごめんなさい。だから、最後に抱かれようと思って。思い出に・・・」

「・・・」

頭の中が真っ白だ。
なにも考えられない。
どうした?なんで?なんでだ?

「・・・」

「・・・ごめんね。ねぇユウスケ、ユウスケもなにか言ってよ」

ぐらんぐらんする頭で、「俺も思い出にするよ」って言うのを待ってる美樹に別のことを言いたかった。

「ふざけるな」か、「馬鹿にするな」か、思い出で抱いてくれってドラマじゃないんだぞ。

そんな物分かりのいい男でもない。
そもそもなんで、こんなことに・・・。

よっちゃんか!
よしおだかよしろうだかわからんが、あのオカマのインポ野郎か。

美樹の口からこいつの名前を聞いたら、俺はかなりへこむ。
へこむが・・・聞いてやろう。
聞いてやろうじゃないか。
全部、聞いてやろうじゃないか。

「よっちゃんか?」

「うん。・・・わかっちゃったんだ」

覚悟はしていたが、へこんだ。
もういいやって逆に冷静になってる自分もいた。

「あの日の夜、よっちゃん家に泊まったでしょ。ユウスケは先に眠っちゃったから、わからないでしょうけど。私、大変だったんだから。ベッドの上でよっちゃんと話してたら、よっちゃんが私にじゃれついてきたの。ユウスケを起こしたんだけど、起きなくて。私、だんだんよっちゃんにされるがままになってきて・・・。あっ、誤解しないでよ。まだ、最後はないのよ。最後までは」

「・・・」

「で、よっちゃんは、はい、じゃれあい終了って言って。後は彼氏としなさいなんて言ってくれたの。その時、ああこれがよっちゃんなりのスキンシップなのかなって。ほらよっちゃん、ハートは女でしょ。だから私にこうして彼氏と楽しみなさいって教えてくれたのかと思って」

「・・・」

「化粧のやり方や服装の選び方なんかよっちゃんに聞きにいって・・・。ユウスケは最近、芝居も忙しいから、ちょっとさみしくなって、よっちゃんに相談しにいったの。よっちゃんは、相談に乗ってくれて、お酒も飲んでるうちにまたスキンシップが始まって、気がついたら・・・」

「・・・」

「そうしているうちになんかよっちゃんに魅かれてる自分に気づいたの。私、この人好きみたいな」

「・・・」

「ごめんね。ごめんなさい」

「・・・」

「それで、よっちゃんもユウスケに謝りたいって。入ってもらっていい?」

「・・・えっ、ここに来てるのか?」

「うん。入ってもらうね」

俺はどこまで、コケにされればいいのか。
腹が立つより、あまりの展開の速さに俺は呆れていた。
ただ心の片隅に興奮というか楽しさを感じていた。
普通じゃ絶対ありえんぞ。
オカマに取られる、いや寝取られるなんて。
傍らにあった安酒のウイスキーをラッパ飲みした。

照れくさそうな、ばつが悪そうな顔でよっちゃんは入ってきた。
初対面の印象からそうなのだが、オカマと言わずにいれば普通の男だ。
この30過ぎの童顔野郎は・・・。

「美樹ちゃんからきいてもらった?そういうことなんで、ごめんなさいね」

変なアクセントで、あやまる童顔野郎。
普通ならぶん殴るとか、帰ってくれなんて考えるところだったが、安酒のウイスキーが逆に俺の頭をはっきりさせた。

そうだ。これは使える。芝居になる。
こんなシチュエーション滅多にない。
いい本が書ける。
ここで演出してやる。
オカマ、女、そして俺の本性見てやる。

いっちょまえの芝居青年になっていた。
俄然、やる気になった俺。

「よっちゃん、・・・本名は?」

「よしおです」

「よしおさんは、美樹のこと、好きなんですか?」

「好きよ!」

よしおのよこに座っている美樹。
うっとりとよしおの顔をみつめている。

「美樹。美樹はよしおの事が好きなのか?」

少し威圧気味に美樹に問いかける俺。
察する二人。
返答に困る美樹。
困惑するよしお。

「さっき、俺のことが好きだって言ったよな。よしおと俺、どっちが好きなんだ?」

完璧に威圧する俺。
黙っている二人。
そして、美樹はよしおに懇願するように、よしおをちらちら見る。

よしおは俺に、向き合い・・・。

「そんな言い方ないんじゃないの。美樹ちゃん、怖がってるじゃない」

「言い方じゃないんだよ。よしおさん。俺は本気で聞いてるんだ。俺の人生がかかってるんだ。わかるよな。あんたらなら」

「・・・」

びびりが入るのかよしお、無言になる。
美樹はよしおから俺をみつめだす。

「美樹。俺はお前が好きだ。お前なしでは生きていけない。それでもよしおを取るのか?」

俺は、美樹の目に訴えた。
俺の演技、台詞はお前に届いてるか?

美樹の目は、潤んだ。

勝った。

とりあえず、先手はとられたが盛り返した。
そして、美樹の目から涙がこぼれた。

「ご・・・ごめんなさい」

どっちの“ごめんなさい”か、俺にはわからない。
が、勝利を確信する俺。

これで抱き締めれば・・・。

その瞬間、よしおが泣き出した。
本当に唐突にだ。

「ユウスケくん。ごめんね。私もこの子がいないとどうしていいかわからなくなるの」

大粒の涙をこぼすよしお。
美樹は自分の涙をぬぐうと、よしおの涙をぬぐい始めた。
下を向き、泣いているよしお。
その横で涙をぬぐう美樹。

やられたと思った。

すべてはふりだしだ。
思った以上にこのオカマやるな。
ハートは女か、女心ってやつなのか。

その後、俺は思いつくまま、最大限の力を振り絞り、美樹の心を俺に向けさせようとした。
知ってる限りの台詞、演技で・・・しかし、よしおはことごとく盛り返して、美樹の心を掴んでいった。

だんだんと美樹のことより、このオカマいやオカマじゃないおっちゃんに勝ちたくなってきた。

なんかいい手はないか?
・・・俺が攻めるから返される。
・・・じゃあ相手に攻めさせればいい。

どんな手で・・・。

そう、どうやって美樹を落としたのか。
俺が学べばいい。
そこにきっとよしおの弱点があるはずだ。

それを俺は耐えられるのか?

・・・耐えてみようじゃないか。

「ねぇ、よしおさん。よしおさんのスキンシップってのを見せてよ。ここで」

できるだけ平穏に言う俺。
美樹に衝撃が走る。

「えっ、ユウスケくん、なに言ってるの?どうしたのよ?」

あわてふためく美樹。
そして、よしおは・・・。
平然と俺の顔をじっと見て、いいのかよって語りかけているようだった。

「ねぇ、やめよ。もう。ごめんね。ユウスケくん。・・・よっちゃんもやめようよ」

そう言い終わろうとした瞬間、よしおは美樹の体をぐっと自分に引き寄せた。

「えっ・・・」

何かを言おうとした美樹の唇を強引に奪う。
かっと驚きで開かれた美樹の瞳は、よしおの体を引き離そうと必死だったが、しだいに引き離す力がなくなるように静かに閉じられていった。
しかし次の瞬間、最後の力を振り絞るようによしおから離れる美樹。

「・・・。もう嫌。帰る」

立ち上がろうとした美樹を背後から素早く抱きしめるよっちゃん。
その右手は、美樹の胸に、左手は美樹の股間に。

「い、いや。・・・よっちゃん」

その手の力を込めるよっちゃん。

「はぁう」

思わず声の上がる美樹。
その声のあがるのとほぼ同じく、よしおの手は美樹の服の下に手を入れた。

「・・ちょ、ちょっと見ないで。ね。ユウスケ」

そして、美樹のセーターは赤いブラが露わになるまで捲りあげられ、スカートもストッキング越しに赤いショーツが見えるまでたくし上げられた。

「美樹ちゃん。ユウスケくんに見せてあげよう。ねぇ」

「いや。いや」

口では嫌がるのだが、もう逃げることを美樹はしていなかった。
よしおはスカートのホックを外し、チャックもおろした。
自ら腰をあげ、その行為を助けているようにも見える美樹。
そして、スカートは脱げた。

「ユウスケくん。知ってる?美樹ちゃんの胸のサイズ。今、E65になったの。矯正下着のおかげでね。矯正下着なんてわからないわよね。ユウスケ君には。・・・そのお祝いに私が彼女にこの下着あげたの」

「あぁん」

よしおの手は巧みに美樹の胸を愛撫し続ける。

「きれいでしょ。でも、・・・ねぇ、美樹ちゃん、ストッキング脱いじゃおうよ?ねぇ、いいよね。もう」

「ぃやぁ。それはいや」

「お願い。そうしないとせっかくの下着が、美樹の下着が汚れちゃうわ。いいの?それでも。私が選んであげた下着を汚さないで。ね」

「・・・ぅうん。・・・やっぱりぃや」

「今日に限って、わがままな子ね。やっぱりユウスケ君が見てるからなのかな。大丈夫よ。ユウスケ君はそんなことじゃ美樹ちゃんを嫌いになんかならないわ。君のきれいな体をユウスケ君も見たいのよ。今日まで一生懸命、矯正してきた体だもん。きっとユウスケ君もきれいだって言ってくれるわ。ね、だから、お、ね、が、い。いい子だから」

「・・・本当?」

「・・・本当よ。ほら、上も脱いで」

よしおはセーターを脱がせた。
そして、美樹を抱えるように立ち上がらせた。

美樹が躊躇した瞬間・・・。

「きれいだよ。美樹。ほら、ユウスケ君もうっとりしてる」

美樹は俺の視線を確認する。
仕方なく頷く俺。

美樹はストッキングを自分で脱ぎ始めた。

そして脱ぎ終わると、「美樹ちゃん、きれいよ。とってもきれいよ」と言って、よしおは美樹のストッキングを受け取り、また後ろから美樹を抱きしめた。

美樹は、火照っていた。
半分開いた瞳で俺の方を見た。

・・・俺は微笑んだ。

もういい。
最後まで見せてもらおう。

美樹の目は開き、そして、背後にいるよしおの方を向き直り、そして激しくよしおの唇を奪った。
貪りつくすような激しいキス。
そして、力が抜けたようにその場に座り込んだ。

「ものすごくいい子だわ。ユウスケ君もきっと大満足。ね、ほら今度は、美樹ちゃんのきれいな体見てください。ね」

ブラを脱がすよしお。
形のいいきれいな乳房があらわれた。
ピンク色に上気した肌、乳首もピンと上を向いていた。

よしおは優しくその乳首を指で弄び始めた。

「ぁあん。ぁん。ぁん。あん」

もう美樹はよしおのなすがままだった。
美樹の赤いショーツはすでにぐっしょり濡れていた。
離れたところで見ていてもはっきりかわいた部分と濡れている部分がわかってしまうほど。
よしおは美樹の乳房を愛撫し続ける。

「どう気持ちいい?いいの?」

「ぅん。うん。ぁんあん。あん」

「それじゃ、わかんないわ。ユウスケ君も知りたがってるのよ。ほら」

乳首が強く揉みしだかれる。

「あーーーん。きもち、い、い。きもちいいよ。も、もっと」

「素直。じゃあ背中責めて上げる」

うなじあたりを舐め始めるよしお。

「ぎゃん。きゃん。あん」

激しく感じ始める美樹。

「ねぇ、も、もう、わ、わわたし、あ~~~ん」

もんどりうって寝転がる美樹。

「はぁはぁはぁ。もうだめ。もうだめ」

優しく背中を触るよしお。

よしおは俺の方を見て・・・。

「びんびんなんでしょ。ね。わかるわ」

そして、美樹の方を見て・・・。

「ユウスケ君がビンビンなの。美樹ちゃんのせいだから。なんとかしなくちゃね」

「ぇ、な、なぁに」

「ほら、美樹ちゃん、ユウスケ君のもさわってあげたら」

「ぁ、ぁ、ぅん」

美樹は俺のジーンズの上から俺のモノを触り始めた。
言われるまま、されるがままの美樹が初めて自分の意志で動き始めた。

よしお、すげぇ。
ここまであやつれるのかよ。

俺は美樹の変貌ぶりよりもよしおに驚愕していた。

「ほら、ユウスケ君もジーンズ、脱いで!美樹ちゃんに協力してあげて」

俺も、よしおの言葉に従った。
美樹の前に俺のモノはいきり立っていた。

「ねぇ、ユウスケ君、私のこと。すき?ねぇ」

「・・・好きだよ」

「・・・ぅれしぃ。・・・きらいにならないでぇ」

美樹は俺のモノをその手で包み、静かに上下に動かし始めた。
まだぎこちなさが残る手コキだった。

「はぁぁ~」

美樹の手は、止まった。
よしおが美樹のショーツの中を触り始めたからだった。

「美樹、ここすごいことになってるわ。もう、ショーツ、びちょびちょだわ」

「はぁわぁーーー」

美樹は俺のモノを掴んだまま、喘ぎ始めた。
いままで見たことのない声のあがり方だった。

「ぅううううわぁ~~。あん。あん。あーーーーーーーーーーーーーーーーん」

よしおの手が止まった。

「あーーーーーーん」

美樹は、倒れこんだ。
肩で息していた。

「はぁはぁはぁはぁ」

「美樹ちゃん、気持ちよかった?」

「はぁはぁはぁはぁ」

「気持ちよかったの?」

「はぁはぁはぁ」

「どうだったの?」

「はぁはぁはぁ、き、き、きもちよ、よかったで、す」

「・・・で、美樹は誰と付き合うの?」

「・・・ぇ」

「誰と付き合うの?」

「・・・ょっ、ょっちゃ、ん・・・よっ、ちゃんよ」

美樹は、また倒れこんだ。

俺は完膚なきまでに叩きのめされた。
だが、俺のモノは今にも暴発寸前なまで高まっていた。
よしおは俺を見た。
そして、俺に近づいた。

俺の耳元で、よしおはつぶやいた。

「いきたいんでしょ。いかせてあげるわ」

よしおは、俺のモノを静かにその手で動かし始めた。
美樹と比べ物にならない見事なまでの手コキだった。
俺はすぐにいってしまった。

幸いな事に美樹は、倒れたままで俺のその姿を見ていなかった。

「美樹、シャワーあびなさい!」

美樹は、おもむろに立ち上がり、ユニットバスへと消えていった。

俺は下半身丸出し、半立ちのモノからは精液がこぼれたまま。
床にも俺の精液が・・・。
無様だった。

だが、俺はよしおに最後のプライドを振り絞り・・・。

「・・・美樹は頼みますよ。幸せにしてあげてください」

よしおは、俺の視線の先まで顔を近づけてきた。

「・・・馬鹿ね。ユウスケ君。私がほんとに好きなのは、あなたなのよ」

・・・と、よしおは俺にキスをした。
驚きのあまり、されるがまま、よしおのキスを受け入れてしまった。

「感心したわ。ここまで強い子はじめてだわ。あなた、過去によっぽどの経験があるのね。途中から、というより初めからあなた、美樹のことより私にどう勝つのか考えてたでしょ。ケツの青い芝居少年って感じがしたわ。でも、結構やるわね。私も本気になったからね。・・・山内君から面白い後輩がいるって聞いて、私会いたくなってね。連れてきてねって言ったら、彼女連れでしょ。私、むかついちゃって。別れさせちゃおうって考えたのよ」

「・・・」

「怒らないでよ。ねぇ。オカマバーに彼女連れはまずいでしょ。それもまじめそうな子は・・・。美樹はいい子だけど、あなたには合わないわね。うん。大丈夫よ。私も付き合う気ないから。あなたに返してあげる。してないわよ。してないわ。私、オカマよ。君となら考えるけど」

「・・・」

「あ、それから、あなたのこれから創る芝居、スポンサーというよりパトロンになってあげる。面白いもの見せてくれそうだもんね」

微笑むよしお。

「・・・、くそつまんないかも。山内先輩のように」

「あの人には出さないわよ。あなただからよ。・・・私と付き合いたくなったら、いつでも言ってよね。よろこんで、付き合ったあげる」

俺は、憎まれ口の一つも叩けなかった。
ユニットバスから出てくる美樹。

「美樹ちゃん。行こうか。送っていってあげるわ」

「ぇ、だって、よっちゃん、今日泊まるって・・・」

「はいはい。今日は帰りましょ。ね」

呆然としている俺を気遣うように、二人は出て行った。
美樹は、俺には何も言ってはくれなかったが・・・。
こうして俺とよっちゃん、美樹の一夜は終わった。

次の日、俺は妙に目覚めがよかった。
なにかひとつ吹っ切れたものを感じていた。
そんな中、芝居の稽古は始まり、終わっていき、何日かが過ぎた。
舞台の幕は上がった。
三日間の公演は成功に終わった。
俺の演技はなかなかの評判を呼んだが、それ以上に俺は役者よりも演出に興味があった。

次は演出してやる。
あのよしおには負けないぞ、と。

美樹もよしおも芝居は見に来ていた。
一緒ではなく、別々にだった。
表で出向けたとき、美樹は一人で俺に軽く会釈をしていった。
よしおは美樹とは別の日に、終わった後、飲みに連れて行かされた。
そこで、よしおは、美樹とは別れたとあっさり俺に告げた。

桜のつぼみの頃、俺は学校に言った。
成績書を取りに行く為だった。
意外にもいくつか可があった。
驚いたのは美樹にノートを借りたあの講義は、優だったことだ。
唯一の優だった。

「美樹にお礼、言わないとな」

正直、会わないようにしていればこのキャンパスでは会うことはない。
ただ、美樹がどこにいるかなんてすぐおれにはわかった。

いつもの学食に美樹はいた。
そこには、出会った頃の美樹がいた。
メガネをかけて、ちょっと真面目そうな格好の美樹が・・・。

俺は迷わず話し掛けた。

「・・・ノート貸して」

一応、了。

なんかとりとめのない文章ですみませんです。
最後のほうが本当はかなり違うのですが・・・。
折を見て、ちゃんとどっかでUPします。

最後まで読んでくれた人、ありがとう。